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体験談(約 96 分で読了)

【評価が高め】世間でいうクリスマスイブに綺麗な娘を買った(11/13ページ目)

投稿:2011-12-01 21:00:00

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本文(11/13ページ目)

待合室に戻ると彼女の背中が見えた。

長椅子にちょこんと座ってバッグをかき回していた。

振り返る彼女。

「おかえり。よかったね、何事もなくて」

そう言った彼女の手には一枚のフロッピィが握られていた。

プラスチックの透明なケースと一緒に。

彼女は別に悪びれた様子もなく、僕の目に黒い四角の板をチラつかせた。

頭の近くでクルクルと人差し指を巻く仕草。

その指先には、彼女の細い髪が巻き取られていた。

一本だけ。

彼女はフロッピィの磁気ディスクをガードする金属のシャッターをカチャと開いて、今引き抜いたばかりの自分の髪をシャッターのスリットに通し、くるっとディスク本体に巻きつけた。

ライターを取りだしてさっと炙る。

僕は笑った。

そういう事だったのか。

用心深い姫様。

フロッピィには封が施されていた。

あの目黒のホテルの暗がりの中では、とてもじゃないけど見えなかった。

いや、他のどこの場所でだって気づかなかった。

「別にヒロを疑ったわけじゃないんだよ」

と彼女は言った。

「このフロッピィは他にも数人の手を過ぎていくから」

フロッピィの封は脆い。

慎重に扱わないとすぐに解けて落ちる。

ブートなんてしようものなら誰かが中身を閲覧したとすぐに分かる。

ファイルの制作者は仲間すら信用していないって事か。

彼女は慎重にフロッピィを透明ケースに収めた。

「今日はお家で寝てようね」

と彼女は言った。

その時、僕はとうとう我慢ができなくなって彼女の手を握って座りこんだ。

どうしても訊いておきたかった。

訊いておかなくちゃいけないと思った。

今はいい。

彼女が目の前にいるから。

目の前にいれば安心感もある。

でも彼女のいない夜はどうだ?

僕はベッドの中でまんじりともできずに過ごす事になる。

きっとそうなる。

そんなの絶対勘弁だ。

「なあ、恵子。そのフロッピィが君を危険に晒したりする事ってあるのかな?」

彼女は僕が突然動いたために、驚いて椅子の上を滑って後退した。

僕と彼女の距離が開く。

そのせいでお互いの握り合った手が吊り橋のようにぴんと張って、垂れた。

彼女は首を振った。

それから、絶対にそんな事はないと小声で言った。

「ありがとう。じゃあもうひとつだけ」

少し安心できた。

彼女が僕を気遣って咄嗟に嘘を言ったのかもしれないけど、だとすればこれ以上訊いたって無駄だ。

でも僕は安心する事にした。

そう信じる事にした。

「あまり喋りたくないよ。ヒロ」

そうじゃないんだ。

そういう事じゃない。

僕はかぶりを振った。

「オタの、あ、えっと太田のアドレスってどうやって拾ったのかな」

彼女はごめんね勝手に見ちゃって、と言ってからこう続けた。

「ホテルに泊まってた夜。二日とか三日前。もっと前?いつだったかよくわかんない。画像がPCに映ったままになってて、真っ黒で、それを閉じるとブラウザにメールボックスが表示されたままになってた。明け方。ヒロはうとうとしていた」

彼女はPCに刺さったままのフロッピィには触れなかったと言った。

「多分ヒロがそっと返してくれると思ってた。あの目黒の夜からそれは分かってた」

自分のたいした情報活動ぶりに情けなくなった。

ゴーリキーパークあたりに出演してたら、きっと一番最初にヴォルガの流れに浮かぶ死体になっただろうな。

「色々訊いてごめん」

と僕は彼女の髪に触れた。

「コーヒーでも飲んでいこう。会社にも連絡入れとかないと」

彼女はその後用事があると渋谷へ戻って行った。

彼女は一体どこで荷物を取り替え、着替えをし、また綺麗になって戻ってくるんだろう。

毎日必ず戻ってゆく渋谷の街に何があるだろう。

そんな疑問がいつも浮かんでは消える。

大して重要じゃない事は分かってる。

質問する事は禁じられた。

まあ、いいや。

女の子の言う事はいつだって正しい。

正しくない時には喋らなくなる。

病院の周りには、いまでも畑がちらほら残っている。

乗り捨てられた赤いバン。

そいつが病院の正面の畑の角に鎮座していて、何故こんなところで廃棄されたままになっているのか理由がわからない。

ガラスは全部取り除かれ、いまでは雑草の苗床になってて、もしかすると春には風変わりなオブジェみたく見えるのかもしれない。

タンポポとかバターカップ。

その他、名も知らない小さな花。

姫様の記憶もいつかこうなる時が来るんだろうか。

色褪せて初々しくなるような。

彼女が戻ってきた時、僕はベッドに座って窓の外を見ていた。

低く垂れた灰色の雲が風景に一様な光をまわしている。

そのせいか景色は遠近感のない一枚の写真みたいに見えた。

写真の右端には駅へと向かう道があって、ごちゃごちゃの民家の先に消えている。

姫様はその道を歩いて、突然写真の中に姿をあらわした。

かなりの距離を隔てても、僕にはその移動する点が姫様だとすぐにわかった。

道に沿ってゆっくりと歩く姫様。

歩く時に正面を見ない癖があって、ちょっと危なっかしい。

道ばたの木や花や、僕にはまったく興味のない、何かしら彼女的に

「可愛いモノ」

を探りながら歩く癖。

右手には白いコンビニの袋が握られていて、果物みたいな何かが入ってて、ちょうどそのくらいの重さで前後に揺れている。

カーテンを閉じる。

CDをトレイに乗っけて再生する。

ベッドに潜りこむ。

布団から頭を出して大きく呼吸すると喉がふいごみたいにひゅーと音を立てた。

確かにだるい。

でも心臓は大きく高鳴ってた。

風邪のせいじゃない事は分かる。

もうじき姫様がここにやって来るからだ。

病院の爺さんの言ってた事は全く正しかった。

今や39度に到達しそうな勢いの熱そのものを、僕は忘れようとさえしている。

僕は健康体そのもの。

立って歩くとちょっとふらつくだけ。

一秒だって早く姫様の顔が見たい。

母の嬉しそうな高い声が響いて、しばらく後に階段を昇ってくる足音が聞こえた。

ガサガサと音がするのはきっと、右手にぶら下げてたコンビニ袋の擦れあう音。

RedHotChiliPeppersのScarTissue。

終わり数十秒の切ないギターの音が階段の足音に重なる。

いつかMTVで見たあの映像を思い出した。

荒野を疾走するぼろぼろのオープンカーとネックの折れたギター。

奏者は演奏が終わると何の躊躇いもなくギターを走行中の車から後方へと、水面に流すみたいに捨ててしまう。

やたら格好良い終わり方。

僕だって何か物事の終わりには、あのくらいかっこよく決めるくらいの事はできると信じてた。

「ただいま」

でもどうだろう。

彼女との最後の瞬間に僕はしっかり立ってる事ができるか?

「ちゃんと寝てましたか?」

涼しげにさよならって言う事ができるか?

「ねね。見てみて」

そんなのまず無理だ。

ありえない。

「みかんとリンゴたくさん買ってきたよ。凄く安かったの」

彼女のフロッピィが、彼女をいつか呑みこんでしまうんじゃないかと、僕はやっぱり不安でしかたない。

病院で聞いた彼女の小さかった声が頭の中で、おまじないの呪文のように唱えられたけど、その効果は頼りなくて怪しい。

「あ、ナイフとお皿」

曲はScarTissueからOthersideへ。

僕も頭を切り換えないとな。

考え過ぎだよ。

風邪のせいで気が弱くなってるんだよ。

多分きっと。

驚くほど慣れた手つきで彼女はリンゴの皮を剥いた。

左手のリンゴがくるくる回転して、等幅の皮が切り取られてゆく。

彼女は左手からリンゴを離さずに四分割した。

ナイフで。

種の詰まったところまでさくっと切り取って、やや大きめな四分の一個が僕の口もとに運ばれた。

リンゴはひんやりしていて爽快感が口の中に広がる。

味はあまり感じなかったけど、唾液管が目一杯開いて、酸味がある事を教えてくれた。

彼女もそのうちの一片に噛じりつく。

シャクシャクと音がして、

「美味しい?」

と彼女の声が聞こえる。

僕は眠くなる。

彼女がそばにいると安心しきって眠くなる。

僕が目を閉じて呼吸を低く、布団の中でもぞもぞして眠ろうとした時、彼女はいつになく優しい声で僕にこう言った。

「明日からちょっと会えなくなるかも。短い間だからすぐに帰ってくるよ。日本に戻ったら真っ先にヒロのところへ…」

そこまで言って彼女は黙りこんでしまった。

日本へ。

戻ったら。

オタのメールを思い出した。

嬢様はインドへ旅行の予定。

もしそうなったら、おれは名探偵の仲間入りだ。

フロッピィから根こそぎダウンロードされた不可解なデータの中からそれっぽい答えを引っ張ってきたオタ。

オタ。

おまえは名探偵だったようだ。

彼女は日が落ちてしまう前に帰っていった。

名残惜しそうにコートに時間をかけて腕を通し、しばらく僕の頬に顔をくっつけててくれた。

「帰ってくるまで待っててね」

と彼女は言った。

彼女に僕の風邪が感染しないといいけど。

インドって暑いんだっけ?

彼女がいなくなったあとの暗がり。

僕はその中でただ横になってる事に耐えられなかった。

PCを起動してオタにメールした。

だからどうなるってわけでもなかったけど。

彼女のいない夜。

僕は部屋から一歩も出る事がなかった。

CDケースの山の中から適当な一枚を取り出して再生してみる。

ところがどれを再生しても、何回やっても気分が晴れる事はなかった。

僕はカード占いでもやるみたいにCDを取り出し、ソリテアで来る日も来る日も音楽を再生した。

こんな経験、誰にでもあるんじゃないかな。

ありえるはずのない未来を占って、川岸で小石を拾い、目標の岩にうまく命中できたら、秘密の恋が叶うとか。

だけど僕の指先が当たりに触れる事はなかった。

どの曲も騒々しくて静かすぎた。

僕は脳下垂体がイカれたみたいに音を食べ続けた。

決して癒される事ない飢え。

おまけに不安まである。

僕が熱と体調不良を押して職場に顔を出したのは、彼女の事をごっそり忘れてしまいたいからだった。

朝、爺さんのいる病院に顔を出して

「安静に」

を貰おうとしたら、爺さんは姫様の顔が見たいと言った。

独り占めしないで先の短い年寄りにも鑑賞させろと笑いながら言った。

僕は落ちこんだ。

だから出社したんだ。

爺さんめ。

不思議と仕事に没頭していると体調が持ち直してくる気がした。

実際、日中は微熱で治まっていてくれたし、関節の痛みも鋭敏になった触感も、鈍いさざ波程度。

そして数日が経過する頃には、マジで何ともなくなり、爺さんには回復のお墨付きを貰うまでになった。

だけど夜一人でいると鬱に襲われた。

音を貪る事に飽きると、僕は死体になって眠った。

オタがレスをくれたのは確かそのあたりだったと思う。

辛かった熱が引き始め、体調がゆっくりと回復しはじめた頃。

遅い昼食にラーメンを食べてた時。

僕は同僚からの連絡だと勘違いして、しばらくケータイを放置しておいた。

ところが差出人はオタだった。

「気にしなくていい。助手席を綺麗にする時つられゲロりそうだったけど」

PCのアドレスに長めのレスを入れた。

オタのレスは長かった。

きっと長い付き合いの中では最長。

オタは姫様がインドへ行った事を残念だ、として、そこから先は手元のデータからではもう何も分からないと締め括ってあった。

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