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【評価が高め】世間でいうクリスマスイブに綺麗な娘を買った(7/13ページ目)
投稿:2011-12-01 21:00:00
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本文(7/13ページ目)
それは永遠に普遍的で、そこにいる事はごく当たり前の約束された事でしばらく我慢すればまた元通り、何事もない毎日が戻ってくると信じていた。
と。
ところが、父親の妹の家族として再編成されたあたりから子供心にも、こいつはおかしい。
自分と幼い弟は見知らぬ世界に住む事になったのだ。
と、ようやくその時になって、耐えがたい悲しみに襲われた。
近所の公園が自分と弟のいる場所であり、実際そこで過ごす時間が多かった。
食事は一日一回だけ。
夜眠る時間なってようやく暖かい部屋に入れた、と笑いながら言った。
それでも暴力に晒されなかっただけ、姉弟はついていたのだとも言った。
公的施設の門をくぐる事もなく、むしろ姉弟はいつも一緒で、あの公園のいたるところに弟の思い出があり、たまには親切にしてくれる大人もいて、熱い夏の盛り、アイスキャンディや花火をもらう事もあった。
「悪い思い出ばかりでもないんだよ」
と。
僕は何も言わなかった。
肩を抱き、ただ彼女の唇から漏れる言葉に耳を傾けた。
姫様が公園の隅で弟と一緒になって蝉を追いかけてた夏、僕はどこで何をしていたんだろう。
弟とゲームソフトの奪い合いで喧嘩をして、泣きわめく弟にトドメの蹴りをいれた時だろうか。
それとも、弟が僕の大切なCDに落書きした報復として弟専用ゲームマシンのソフトウェア接続口に接着剤を流しこんだ時だろうか。
僕は居たたまれない気分になった。
でも、僕は憐れんでいるわけでもなかった。
姫様の古い時間は残念ながら過ぎ去った。
悲しいのは、今ここにいる姫様が悲しんでるという事。
僕の目には彼女は自暴自棄に陥ってるようにみえた。
自分の未来は不要なもの、弟が消えた夜からこっちを残酷なオマケとしてとらえている。
だけど今にして思えば、そんな僕の分析こそが甘く幼稚だったわけだけど。
Smashing Pumpkinsを3回ほどリピートしたあたりで、姫様はウトウトしはじめた。
シーツでしっかりくるんであげて、ヒーターを高めの温度に再設定した。
眠っているようで頭はしっかりしていて、それでいて、複雑な質問には答えられない。
彼女は何か話をしてほしいと言った。
しばらく考えたあとで、僕は夢の話を持ち出した。
昨夜みた夢。
いや、いつだっていい。
嘘だっていい。
彼女は興味深々で、早く早くと僕を急きたてた。
僕は病院の待合室にいる。
風邪をこじらせたのかもしれない。
理由はハッキリとしないけど、僕はそこにいて、ぼんやりテレビを眺めている。
急患ではなかったんだろうね。
僕は焦ってはいなかったし、行き交う看護婦も僕には無関心だった。
ただ順番がまわってくるのを大人しく座って待っていたんだと思う。
テレビのチャンネルは退屈なワイドショーで、そのうち僕は、もっと退屈そうな医学雑誌を本棚から引っぱりだした。
ほら、よくあるでしょ。
退屈さを紛らわすために、もっと退屈な何かを始めてしまう事って。
雑誌の最初のページは特集でナノテクノロジーの話だった。
ナノテクっていうのは、驚くほど小さな世界の話。
細菌と同じくらいか、もっとちいさなロボットでもって体の掃除をしたり、場合によっては手術までしちゃう事もある。
でもさ、おかしな事にそこに書いてあるのはそんな事じゃなかった。
微細ロボットをつかって人を大量死させる計画とか、どこかの国がもう実験を始めてるとか、そんな怖くなるような話だった。
嫌気が差して雑誌を空席に投げ出し、それから僕はまたテレビに目をやった。
たしかその時だったと思う。
ワイドショーの画像が一瞬グニャと曲がって、それから緊張したアナウンサーを映し出した。
ほら、よくあるじゃん。
報道部からの生中継。
周りで忙しそうに走りまわるスタッフがいてさ。
そしてアナウンサーは、カメラの手前にいる誰かと話をして、視線をカメラに戻さないままソビエト連邦が崩壊したと言い、ついで旧連邦軍の一部が日本に侵攻を開始したと告げた。
どれほど怖かったか。
テレビはそれきり何も映らなかったし、病院はソビエト軍に制圧、閉鎖されて僕は外にでる事もできなかった。
戦争になったの?と彼女は聞いた。
「さあ、どうなんだろうね」
と僕は姫様の頭を撫で、
「そこでいつも夢は途切れるんだよ」
と説明した。
「よく見る夢?」
「頻繁には見ない。でも子供の頃から見てる怖い夢。侵略軍は子供の頃は火星人だった。いつの間にか僕から空想力がなくなって旧ソビエトになったけどね。でもさ、いつも本当に怖いんだよ。毎回新しい恐怖があって、それに慣れる事はないんだ」
「わたしも怖い夢みるよ」
と彼女は言った。
「誰にだって怖い夢はあると思う。気にしない事だよ」
「ヒロは死んじゃう?えっと、その夢の中で」
「死ぬ事はないね。途切れるから。僕が味わうのは恐怖だけ」
「私は死んじゃうの。夢の中で」
「誰かに殺される?追いかけられて?」
「ううん。自殺しちゃうの。ビルからジャンプして」
姫様はアクビをして、すぐに眠りに落ちた。
半ば寝た状態での話だったから、脳の大半は寝てたのかもな。
もうじき夜が明けようとしていた。
5日目の朝。
姫様がセクシーな下着姿で眠りについたあと、ケータイに着信があった。
送り手はオタで、メッセージはPCで確認してほしいとの事。
早いな。
凄い士気の高さだ。
PCを起動してメールを確認すると、数時間前に送付したファイルの解説がもう届いてた。
「ヒロくん。確信とまではいかないけど、今回の中身は当たりだ。今まで意味のなかったジグソーパズルの断片に、収まるべき位置を指示する事ができるかもしれない。最初にまず確認しておきたい事がある。どうにかして、嬢様の本名を調べる事ができないかな。お前は嫌がるかもしれないけど、彼女のバッグをひっくり返してまず免許証を調べる事を勧める。彼女の本名は、佐藤恵子。19歳。国内での運転免許取得済み。その若さでアジアのほとんどの国と、ヨーロッパの数ヶ所を旅した事がある。広東語を少し話せる。それからジュネーブ商業銀行に口座を持ってて預金額は日本円で2800万円。さらに詳しい説明は、彼女の免許証の確認の後で。もちろんお前には、彼女のバッグに触れないという選択肢だってある。オレにでも理解できる。そのくらいは。ここから先は彼女の本物のプライバシーだ。お前は立ち入るべきじゃない。いずれにしても連絡をくれ。急いで。寝ないで待ってる」
大袈裟な事になっちまったな。
僕が知りたかった事はそんな事じゃなかったのに。
彼女のフロッピィの中身が分かればそれでよかったんだ。
こんな大事の予定じゃなかったんだ。
僕はオタに返信した。
「もう充分だよ。ありがとうオタ。ここで降りる」
そして、送信ボタンを押したあと、僕は彼女のバッグをひっくり返した。
説明し難い衝動に駆られて。
僕は確かに彼女のフロッピィを盗み見た。
でもそれは恐らくは解明できない難しい何か、で終わる予定だった。
彼女は何かよくない事、をやってるようだったし、あるいは僕の助力を必要としているのかもしれない、という勝手な思い込みもあった。
しかし、彼女の財布を開いてみる事、それは彼女のプライバシーに直接触れる行為だ。
そんな事はしたくなかった。
するつもりもなかった。
でも、僕はそうした。
何枚かのクレジットカードに紛れて、免許証は見つかった。
見覚えのある端正な顔立ち。
名前を確認すると、佐藤恵子と書かれてあった。
生年月日から彼女の年齢が19歳だとわかった。
「オタ。彼女は、佐藤恵子。間違いない。免許証を確認した。ファイルを送信してほしい。説明が聞きたい」
オタは待っていてくれた。
僕からの連絡に待機してたかのようなスピードでレスが返ってきた。
1通ごとにアップしてそのまま送ってくれてるんだろう。
紙芝居のように、ファイルが1つずつ届き、僕の指先で開かれる。
「いきなり戸惑うかもしれないけどその免許証は偽モノ。つまり偽造。姫様は免許取得後1年以内に免停を喰らってる。その後再発行された形跡はない。理由はわからない。これを調べるために、ヤバい事をやった。内容は説明しないけど。蛇の道はheavy。その手の情報をすぐに洗ってくれる奴がいるって事だけ。金もかかった。請求なんて野暮な事は言わない。しかしだ。スニーカを今すぐ梱包してオレに送るくらいの事をしても罰はあたらないじゃないかな。ああ、それから彼女の名前だけは、本物だ。だから確認する必要があった。彼女の免許証の名はつまりパスワードだったってわけだ。19歳ってのも嘘。名前以外の情報はその後誰かが更新してるらしい。黙ってて悪かった。でもさ、知ってたらおまえは間違いなく彼女のバッグを調べたと思うんだ。正直そうはしてほしくなかった。最初におまえが「降りる」とレスくれた時心底ほっとしたんだけどな。でもお前はやはりやった。残念だったよ」
免許証も偽者か。
驚いた。
とはいえオタのレスにあった
「蛇の道はheavy」
の一行を見逃すほど動揺はしてなかった。
その言い回しはイマイチだ。
できれば止めたほうがいい。
2通目。
「まずgifファイル。この日本人の男の子が手に持ってるウォータガンに注目。登録商標が刻印されてるはずの場所に、例の不明な数字。見てもらえばわかるけど、前回の3枚よりはかなり程度がいい。一見したくらいじゃ、そうとは分からない。疑ってはじめてそうだとわかるレベル。プロっぽい。写真の男の子は日本人だった。なぜそう断定できたかというと、頭に被った紅白のキャップは幼稚園、小◯校で、僕が被ってたそれと同じだったから。リバーシブルで、運動会の時白組でも赤組にでもなれる。男の子のキャップは、サイズが合っていなくて、極端に大きかった。垂れ下がったひさしが唇以外の顔の部品を隠している。男の子はレンズを見ようとしたんじゃないかな。そうするために、顔を上げようとした。でもシャッターのほうが僅かに早く作動したんだ」
君の弟なのかな。
この子が。
5歳くらい。
酷く痩せている。
手に持った水鉄砲は大きくてアメリカ製で新品で、男の子がそれを大切にしている様がわかる。
大切なものは両手で抱くようにして持つんだ。
ちょうどこの写真の子のように。
他の誰かに持っていかれないように。
3通目。
「エクセルファイル。嬢様は偽造旅券を使ってる。4年前に日本政府から発行されたように見えるけど、実は1月前に新宿で偽造された。あるいは新宿で誰かに手渡された。その製作費用と必要な素材のリスト。驚くほど高いな。きっと本物そっくりなんだろうな。効果まで。一度見てみたいよ。嬢様のそのパスポート。それからその他こまごまと、いろんな偽者の書類。預金とそのリスト。余談だけど、嬢様は過去にも何度か偽名でパスポートを作ってる。違う場所で。ご丁寧にその住所も載ってる。見ても仕方ないだろうけど、一応送り返した。テキストエディタ。これに関しては推測でしか言えない。前回のと同じだ。誰かが誰かに宛てた手紙。メールのコピー。おまえだって推理ドラマを見ながら、推理した事くらいあるだろう。そんな程度の説得力しかないけど嬢様は近いうちにインドへ旅行の予定。場所はデリー。もし嬢様が1週間近く消える事があったら、おれも名探偵の仲間入りってわけだ。以上。多分これらは謎とかそんな複雑な事じゃなくてファイル製作者はやるべきとこを当たりまえのように自然にやったんだ。覗き見してる俺達が、余計な事を考え過ぎてしまった。美人の嬢様のせいで、なにか特別の事ように扱っちまった。他になにかあれば送ってくれ。もう、そんなに難しい事じゃないと思う」
僕は時々君が現実には存在しないんじゃないかと錯覚する事がある。
君が話してくれた町も公園も絶対に訪れる事のできない架空の地。
本当にあるのかどうかも怪しい。
今だってそうなのかもしれない。
僕は君の事は何も知らない。
名前さえ。
オタは間違いないと言ったけど、それは確認のプロセスでの事だ。
誰も君の本当の名を知りえない。
君は僕のすぐ手の届くところで眠っている。
柔らかい前髪がおでこのとこで一斉にカーブして小さな背中へと流れる髪の本流へと消えてる。
それは見てとれる。
僕はそれに触れる事ができる。
そうしようと思えば、いつでも。
でも君の額の中にある脳は、まったく違う夢を見てるのかもな。
それこそ僕が永遠に知る事のない、異国の地、そこで過去に起きたいろんな出来事と悪夢。
なあ、姫様。
君が目覚めたらどこへ行こう。
今日も何も考えないで、はしゃいで飲もう。
君が望めばどこか遠くを目指してもいい。
僕じゃ力不足なのは承知してるけど、それでも君が喜んでるとこが見たい。
君の笑ってる顔をしっかり覚えておきたいんだよ。
オタからのメールに全て目を通して僕はしばらく考えてから、もう一度オタにメールした。
貼付するファイルはない。
気まぐれかただの暇つぶしか、対して重要じゃない事のために、僕らは大量の文字を使う。
僕とお前は友人なんだと、だからいいじゃないかと、迷惑この上ない下らない2バイトの羅列を突然送りつける。
オタは、大抵レスをくれた。
それがどんな下らない内容でも。
そんな仲でも、1年に数えるくらいは、お互い真面目で相手を思いやるメールが届いたり届けられたりした。
これもそうなのだと思う。
そんな時はどうしてもメールしたくて仕方ない。
「なあ、オタ。姫様はリッチなのに、なんでオレと遊んでるんだろうな。そうする事になんの意味があるんだろう」
多分思考力が酷く落ちこんでたんだと思う。オタも察してくれてたのか、いつもの罵詈雑言はくっついてこなかった。
しかも素早いレス。
「嬢様の名を使ったからって、それが彼女のものだとは限らないだろう?逆にオレが触ったファイルのすべてが、彼女に関係した事なのかどうかも証明できない。嬢様は譲様だよ。オレから見れば、まあ、美人はすべて妖精みたなものだけどさ。そこにいるのに手に取る事はかなわん。実在しないのと一緒だ。しかしおまえから見ればまた事情も違うだろう」
似たようなものさ。
僕もオタも。
僕はひとりぼっちた。
昼過ぎに目覚めた。
姫様と一緒にベッドの上で丸まって、2匹の猫みたいに寄り添い、窓を通過して差しこんでくる暖かい陽射しにくるまっていつまでもだらだら眠り続けた。
先に起きたのは僕の方だった。
ベッドから滑るように落ち、一回転して走ってトイレへ。
それからシャワーを浴びた。
頭はすっきり爽快。
バスタオルで濡れた頭をごしごししながら、姫様を揺り起こす。
その時頭の中でカチっと音がした。
僕の脳にモードが変更されたようなあからさまな変化があって、自分でも抗う事のできない強い衝動が、体中に沸き起こった。
普通の男がそうやるように、僕は姫様を求めた。
彼女はちょっと驚いたような顔をした。
抵抗はなかった。
優しく抱きとめられた気がする。
その後はよく覚えてない。
姫様がバスルームに消えたあと
僕は彼女のために何かしてあげたいと真面目に考えはじめた。
僕にしかしてあげれないような特別な何か。
できればあまり大袈裟じゃないほうがいい。
彼女がそうとは気づかない程度の何か。
姫様は例によってちょっとした用事のため渋谷に戻ると言い、僕はゆっくり食事してから、彼女の後を追った。
待ち合わせは東京駅。
あの後僕は彼女にこう提案した。
バスルームから出てきた彼女をつかまえ、髪を乾かすとか化粧とか、そんな事を始める前に、彼女に僕の提案を聞いてもらった。
僕は、君が昔いた公園は遠いのかと尋ねた。
つまり、弟と過ごした、君にとっては特別な意味のあるあの場所。
彼女は最初、
「あそこへ行く事になにか意味があるとは思えない」
とか何かそんな意味合いの事を言ったように記憶している。
でも、そのすぐ後で、僕の嘘のない真剣な表情を見てとると
「ありがとう」
と言った。
本当は何度も1人で行こうと考えた、と彼女は言った。
あそこを訪れるのが怖かった。
と。
ヒロがよければ、ぜひ行きたい。
彼女は最後に、私をそこへ連れて行ってほしいと言った。
東京駅は広い。
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(2020年05月28日)
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