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なぜこうなったあん2(1/5ページ目)

投稿:2025-06-02 06:25:01

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本文(1/5ページ目)

ゆゆゆ◆OYCRZ5I(10代)
前回の話

「ううううっ……。ぐすっ。ひっく」教卓の前でスカートを脱がされてしまった渚沙は、ブラウスの裾を引っ張って、少しでも露出する面積を少なくしようと健気な努力をしていた。ショーツは隠す事ができても、そこから伸びる白く細い脚は丸見えだ。泣きじゃくる渚沙は、羞恥心で顔を真っ赤にしていた。女子も男子も、…

渚沙の人生において、朝を迎えるのがこんなにも憂鬱なのは、初めてのことだった。

布団の上で何度も寝返りを打ちながら、昨日の出来事を回想する。

クラスメート全員の前で、制服を脱がされた。中学に入学したばかりの少女にとってそれは、恥ずかしくて、惨めで、死んでしまいたくなるほど嫌なことだった。

クラスメートの顔が頭に浮ぶ度に、悲鳴をあげそうになる。

興味深そうにしている男子。

小馬鹿にしたような笑いを浮かべている女子。

自分の下着姿を観察し、未成熟な体つきについて嘲るような視線を送られた。

同級生と比べても、胸やお尻の膨らみが小さいことは、渚沙も自覚している。密かにコンプレックスに感じていた部分を、クラスメートの男子に見られてしまった。

思い出しただけで、胸が苦しくなる。

「もう……学校、行きたくない……」

涙声で呟きながら、渚沙は布団を頭から被った。昨日のことを思い返す度に、涙が溢れてくる。なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのだろう。

ついこないだまで親しくしていた友達も、急に態度を変えてしまった。渚沙が服を脱がされている最中も、誰一人としてそれを止めたり、諌めたりしてくれなかった。あの場において、渚沙の味方は一人もいなかった。

それは早嶋渚沙という人間の価値が否定されたようなものだった。学校というコミュニティが社会の全てだと錯覚しがちな年頃の少女にとっては、このまま時間が止まればいいのにとすら思えるほどの、辛い現実だった。

いつも起床している6時半が近づくにつれて、憂鬱な気持ちが大きくなっていく。時計を見るたびに、ため息が漏れる。

「もう……やだ……」

布団にくるまりながら、渚沙は頭を抱える。

いっそ、学校を休んでしまおうか。体調が悪いのは事実だし、きっと顔色も悪いはず。両親も、仮病を疑ったりはしないはずだ。それは魅力的な案に思えた。

だが、渚沙はすぐにかぶりを振る。

今日学校を休んだら、明日はもっと行きづらくなる。明後日も、明々後日も、きっと同じような日々が続くに違いない。

霧坂学院に行きたいと最初に言ったのは自分自身で、両親には無理を言って私立の中学に通わせてもらっている。学費だって、決して安くない。早嶋家の家計が苦しいことは、渚沙もよく知っている。それでも両親はそんなことをおくびにも出さず、渚沙を笑顔で送り出してくれた。だから、休むことはできない。

渚沙の思いやり深い性格が、両親に相談するという選択肢を奪い取り、彼女自身を窮地に追いやってしまった。

それに、学校を休めない理由はもう一つ。

昨日の夜、渚沙のスマホにメッセージが届いたのだ。差出人は、綺咲姫子だった。過剰なくらいの絵文字で埋め尽くされた悪趣味な文面は、要約すると次のような内容だった。

『明日、朝早く学校に来てね。大事な話があるから』

詳細は一切書かれていないのが、渚沙の不安を煽る。そういう気持ちに陥ることを狙ってあえて書かなかったのだろうかとすら思ってしまう。

姫子がいじめの主犯格であることはもはや疑いようがなかった。彼女は入学初日から挨拶を無視してきたり、渚沙のことを快く思っていない素振りを見せていた。

クラスの皆が急に嫌がらせを始めたのも、姫子が何か先導しているに違いなかった。

(なんでなの……?綺咲さん……)

渚沙は布団の中で、姫子への疑問を募らせる。どうして、こんな目に遭わなければいけないのだろう。自分の何が姫子の気に障ったのか、渚沙には皆目見当もつかなかった。

「渚沙ー?起きないのー?」

階下から母の声が聞こえてきて、渚沙はビクッと肩を震わせる。気づけば、時計は6時を過ぎてしまっていた。いつもなら自分で起きてくる娘が、なかなか降りてこないことを不審に思っているのだろう。

「う、うん!起きてるよ!」

反射的にそう答えた後、渚沙は憂鬱な気持ちで起き上がる。布団から出るのがこんなに辛いのは初めてのことだった。

パジャマを脱ぐと、ハンガーラックに掛けられている制服に着替える。ブラウスのボタンを掛けていると、嫌でも昨日のことを思い出してしまう。

目頭が熱くなる。でも泣くわけにはいかない。目を真っ赤にして一階に降りたりしたら、両親に何があったのかと尋ねられるだろう。

ブラウスのボタンを全て留め、リボンを結ぶと、渚沙はスタンドミラーで自分の姿を確認する。

顔色は少し青白いような気がしたが、そんなに目立ってはいない。目元も腫れていない。これなら、上手くごまかせそうだ。

渚沙は鏡に向かって笑顔を作ると、鞄を持って部屋を後にする。

一階に降りると、両親は既に朝食を摂っていた。

「目覚まし時計セットするの忘れてたあ」

渚沙は両親に聞かれる前に、おどけたような口調で言い訳をする。

「珍しいわね」

母はそう言うと、食卓に味噌汁の椀を置く。そして、渚沙のためにご飯をよそってくれた。

「うん……ごめんね……」

謝りながら、渚沙は母から茶碗を受け取ると、自分の席に座った。丁度ご飯を食べ終わったらしい父は「ごちそうさま」と言って食器を台所に運んでいく。どうやら今日は早く出勤しないといけないらしく、既にスーツ姿だった。

「渚沙、学校頑張れよ」

「うん、パパも頑張ってね」

父を笑顔で見送る。いつもと変わらない、他愛もないやり取りだった。

それなのに、何故だかいつもよりも体力を消費してしまう。普段通りの自分を演じるのに、神経をすり減らしてしまう。

「どうしたの、渚沙。食欲ないの?」

隣に座っている母が、渚沙の顔を覗き込んでくる。

茶碗を手に持ったまま固まってしまって、箸も動かさない渚沙を不審に思ったようだ。

「あ……ううん、そんなことないよ!」

渚沙は慌てて返事をすると、慌てて朝食を食べ始める。食欲がないのは事実だったが、詰め込むようにして胃に流し込んだ。

食事を終えた渚は歯を磨いて、顔を洗い、髪を梳かして身支度を整える。

「行ってきます」と声をかけると、渚沙は玄関に向かった。靴を履いている最中に、母親が見送りに来てくれる。

「今日は早いのね」

「うん、ちょっと用事があって……」

いじめっ子に呼び出されている、とは口が裂けても言えなかった。

渚沙はなるべく自然に見えるように笑顔を浮かべると、もう一度「行ってきます」と挨拶をした。玄関を出てから扉を閉めるまで、母はずっと渚沙を見つめていた。

学校が近づくにつれ、渚沙と同じ制服に身をまとった霧坂学院の生徒が増えてくる。まだ時間が早いので数はまばらだ。きっと、部活の朝練がある生徒ばかりだろう。

渚沙は俯きながら、重い足取りで学校を目指す。学校に着けば、またいじめが始まるのだ。想像するだけで気が滅入ってしまう。

(今日は何をされるんだろう……)

日に日にいじめの内容はエスカレートしている。昨日はとうとう、皆の前で服を脱がされてしまった。今日は更に酷い目に遭わされるとしたら……。

(……っ)

吐きそうになるが、何とか堪える。もう嫌だ、帰りたいと心の中で何度も繰り返して、ぎゅっと鞄を抱きしめる。

学校が見えてくると、渚沙の足は更に重くなる。校門をくぐり、校舎に向かうが、その道のりは普段の何倍も遠く感じられた。

まだ誰も登校していない教室に入ると、一直線に自分の席に向かう。鞄を机の横に掛けると、椅子に腰を下ろした。

いつもよりも早く来たので、教室内は静まり返っている。時計の音がカチカチと鳴り響く中、渚沙は不安げに周囲を見渡す。具体的な時間を指定されていないので、正門が開く7時丁度に来たのだが、早すぎただろうか。誰もいない教室は、やけに広く感じられる。

教科書を机の中にしまおうと手を差し込むと、指先に何かが触れた。渚沙は机の中の物は基本的に全て持ち帰るようにしている。中に何か入っているということは、別の誰かが入れたのだ。

嫌な予感を感じつつ、それをつまみ出す。出てきたのは、A4サイズのノートの一枚を千切ったものだった。

(‼︎)

下手くそな落書きが渚沙の目に飛び込んでくる。

ノート一杯に、長髪の女の子らしきキャラクターが描かれていた。雑なタッチで分かりづらいが、その少女は裸らしい。小さな胸や足の間に黒いもじゃもじゃしたものが描かれている。

笑顔の少女の口元からは吹き出しが出ていて、『渚沙のおっぱい触って♡』と書かれていた。

「ひっ」

渚沙は思わず、小さな悲鳴を漏らす。紙をくしゃくしゃに丸めると、教室の後ろにあるゴミ箱に放り投げた。

(こんなの……酷すぎる……)

あの下手な絵はきっと男子の誰かが描いた物だろうと渚沙は悟る。厳しい受験を突破したエリートが集う霧坂学院の生徒が描いたとは思えない幼稚なイラストだが、渚沙を辱めるには充分すぎる代物だった。

(誰かが……私の裸を想像してあんなものを描いたってこと……?)

渚沙は、自分が人目を惹きつける容姿をしていることは自覚している。小学校時代、周囲の男の子から何度も告白されたことがあるからだ。本人は自分の容姿にさほど自信を持っているわけではないが、男子からは一定の人気があるのは事実だった。

だけど、これまで向けられてきた好意の視線は、あの落書きのように下品で不快なものではなかった。自分と仲良くなりたいという憧れのような純粋な眼差しだった。

だが昨日、ブラとショーツのみの姿になった渚沙に向けられた男子の視線は、これまでとはまるで別種だった。まるで肉食獣が仔ウサギを見つけたような、ギラついたまとわりつくような、舐め回すような眼差しだった。

僅かに盛り上がった胸や鎖骨、剥き出しになったお腹や細い足。男子達はそれらの部位を目に焼き付けるように、じっくりと観察していた。

性的な対象として、異性から見られている。その感覚は、渚沙に激しい嫌悪感を抱かせるのに十分だった。性に対しての興味と好奇心が強まっている少年達にとって、昨日の渚沙は格好の餌食だった。そういったことにこれまで無頓着だった渚沙にとって、彼らが自分に向ける眼差しは恐怖以外の何物でもなかった。

悪い想像が膨らんでいき、渚沙の心臓はドクンドクンと大きく脈打ち始める。

(次は……、皆の前で裸にされちゃうかも……)

そんなことはあり得ない、とは言い切れなかった。姫子なら、それくらいのことは平気でやりかねない。彼女がそうけしかけてきたら、クラスメート達もきっと乗ってくるだろう。自分が裸にされるのを、皆は楽しそうに眺めるに違いない。

(嫌だ……、そんなのっ……)

想像しただけで、目に涙が滲んでくる。

その時、教室の扉が開く音がした。渚沙はビクッと肩を震わせると、恐る恐る扉の方に目を向ける。

そこには姫子が立っていた。肩まで伸びた赤みがかった髪が朝日を浴びて輝いている。にんまりと笑いながら近づいてくる彼女に、渚沙は思わず身構える。

「おっはよー、早嶋さん」

姫子は親しげに、渚沙の机に軽く腰掛ける。彼女が近づくと、ほんのりと香水の甘い香りが漂ってきた。

彼女の後に続くようにして、教室にここあと莉里が入ってくる。そして、その後にもう1人───。

(あ、亜耶ちゃん……)

かつての親友は決して渚沙と目を合わせようとせず、気まずそうに俯いていた。

取り巻きの二人はともかく、どうして亜耶まで連れてきたのだろう。渚沙は嫌な予感がして、思わず唾を飲み込む。

「あれ、聞こえなかった?おっはよー、早嶋さん」

「お、おはよう……」

姫子への恐怖心を抑えながら、渚沙は何とか挨拶を返す。姫子は一瞬キョトンとした後、ぷっと噴き出した。

「あははっ!なあに?元気ないじゃん。これまではうっとおしいくらい元気に挨拶してきたくせに」

小馬鹿にしたような口調で、姫子は渚沙の顔を覗き込んでくる。渚沙が快活さを失いかけているのは、他ならぬ姫子のせいだ。不快感を抑えきれず、渚沙は眉を顰める。

「あ、怒った?でも、本当のことだよ?内心みんな、早嶋さんのことウザいって思ってたから」

「っ……」

渚沙は俯いて唇を噛みしめる。いじめている側の人間からそんなことを言われて、悔しくないわけがない。でも反論する勇気はなかった。

「な、何の用なの……?」

中々本題に入ろうとしない姫子に、渚沙は痺れを切らして尋ねる。不安で声が震えてしまったのが情けなかった。

姫子は焦らすように、ニヤニヤ笑いながら取り巻きの二人と目を合わせる。陰湿なくすくす笑いが教室に響いた。亜耶だけが無表情で、渚沙をチラリと見てくる。

「昨日、なんで早く帰っちゃったの?早嶋さんに用事があったのにぃ」

姫子は机から降りると、挑発的な眼差しで渚沙の顔を覗き込んでくる。渚沙は昨日、飛び出すようにして教室を跡にした。クラスメートの視線に晒されるのが耐えられなかったのと、姫子たちに絡まれるのが怖かったからだ。

「昨日、皆で早嶋さんの下着の色を当てっこしたでしょ?ブラもパンツも水色だったよね。当たったのは、亜耶ちゃん一人だけ。やっぱ、親友ってことだね。下着の色までお見通しって感じ?」

「別に……そんなんじゃないよ」

姫子の揶揄うような物言いに亜耶は心底不快そうに、ぽつりと呟く。言外に、親友扱いするなと訴えているように聞こえて悲しかった。

「それでね、せっかく正解したのに賞品が何もなしだなんて亜耶ちゃんが可哀想でしょ?だから、早嶋さんから何かあげたらいいんじゃないかと思ってね」

「しょ、賞品って?」

渚沙には嫌な予感しか湧いてこない。姫子の口からは、これまでも禄でもないことしか出てこなかった。

姫子は渚沙の耳元に口を近づけると、内緒話でもするように囁く。

「やっぱ、下着当てゲームの商品っていったら一つしかないよね。ブラとパンツを亜耶ちゃんにあげなよ」

渚沙は絶句する。そんなこと、出来るわけがない。亜耶だって困惑するに決まっている。自分の下着なんて欲しくないだろう。渚沙が何も言えないでいると、亜耶はそっぽを向きながら言う。

「貰ってあげるから、早く脱ぎなよ」

渚沙は反射的に、ばっと胸元を手で覆い隠す。亜耶の目には軽蔑の色が浮かんでいた。渚沙のことを、まるで汚物でも見るような目で見ている。親友だったはずの彼女からの冷たい視線に、渚沙は目眩がするようなショックを受けた。

「本当は昨日履いてた水色のやつを渡すのが筋だろうけど、早嶋さんすぐに帰っちゃうからさ。しょうがないから、今着けてるやつでいいってことになったの」

「い、今着けてるやつって……」

心臓がバクバクと音を立て始める。渚沙は自分の体を抱くように、ぎゅっと腕に力を入れた。

最悪の想像が、現実になりつつある。

このまま下着を渡したら、一日ノーブラノーパンで過ごさなくてはならない。考えただけでかあっと顔が熱くなる。

それに目ざとく気付いた莉里が、「うわ、興奮して顔赤くしてるんだけど」と渚沙を揶揄う。ここあもニヤニヤしながら、「ホントだあ」とわざとらしく言った。

「ち、ちがっ……、違うよ……」

羞恥に頬を染めながら、渚沙は抗議する。

「何でもいいから。早く脱ぎなよ。これでもこっちは気を遣って、他の子が登校してくる前に済ませてあげようとしてるんだからね」

姫子は諭すように言う。だが、その口調には有無を言わせない響きがあった。

「む、無理……。そんなこと、出来ないよ……」

渚沙は弱々しく首を振る。このままでは、本当に下着を奪われてしまう。頭の中で必死に許してもらう方法を考える。

「し、下着が無くなったら、お母さんが変に思うかも……」

「大丈夫でしょ。下着が一セット無くなったくらいじゃ気づかないって」

姫子はまるで取り合おうとしない。もう、彼女の中では渚沙が下着を渡すことは確定事項らしい。

それでも、何とかこの場を切り抜けようと、渚沙は必死に頭を回転させる。

「あ、明日……、昨日つけてた水色の下着を持ってくるから、それで許して……」

なんとかそれで譲歩してもらおうと、渚沙は懇願する。

「んー、どうしよっかなー」

姫子は人差し指を顎に当てると、考える素振りを見せる。しかし、それはポーズだけに過ぎなかったようだ。すぐに答えが出たのか、渚沙の方を振り向いてニコリと笑う。

「やっぱり駄目ー。亜耶ちゃんも明日までなんて待ってられないもんね」

「そ、そんな……」

渚沙は絶望的な気分になる。亜耶は無言で、小さくため息を吐いた。姫子と同じ意見ということだろう。

味方をしてくれる人は誰もいない。渚沙はこの場から逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。しかし、4人に囲まれているこの状況では、逃げ道などあるわけもない。

「また、言い訳つけて逃げようとしてるでしょ?」

渚沙の心の中を見透かしたように、姫子が指摘する。図星を突かれて、渚沙はビクリと肩を震わせた。

「無理やり脱がせて、素っ裸にしてやっても良いんだからね。その写真をネットにばらまいたりしたら、ロリコンのおっさんたちが大喜びかもね」

姫子は冗談めかして言うが、その目は本気だ。このまま下着を渡さないと、本気で実行に移すに違いない。

「莉里、ここあ、やっちゃって」

姫子が声をかけると、莉里とここあがじりじりと距離を詰めてくる。同級生の服を脱がすことへの遠慮は感じられず、この状況を楽しんでいることが態度から伝わってきた。

「や、やめてっ……!」

渚沙は懇願するが、もちろん聞き入れてもらえない。ここあの手が肩に触れた瞬間、渚沙は飛び退くようにして立ち上がった。

「う、うううう……」

胸元を押さえていた手を離すと、恥ずかしさで思わず目を伏せた。

無理矢理脱がされるくらいなら、自分で───。そんな風に割り切れるほど、渚沙は強くない。恥ずかしいという気持ちが、どうしても勝ってしまう。

(下着を着けてなくても、クラスの皆に見られるわけじゃないし……。うん、大丈夫……。だい……じょうぶ……)

自分自身を誤魔化すように、渚沙は心の中で何度も大丈夫と繰り返す。実際は少しも大丈夫ではないのだが、そう言い聞かせないと心が潰れてしまいそうだった。

「脱ぐ気になった?それなら、早くしてね」

姫子が急かしてくる。渚沙は意を決すると、スカートの中に手を入れた。

ショーツの端を指で挟み、ゆっくりと下ろしていく。スカートが捲れてしまわないよう、ゆっくりと、慎重に。太股を滑っていく布地の感触に、渚沙はぶるっと体を震わせた。

「うわ……ホントに脱いじゃった」

「早嶋さん、結構大胆だねえ」

莉里とここあのはしゃぐ声が羞恥心を煽ってくる。

渚沙の右手に握られているのは、白のショーツだ。シンプルなデザインで、飾り気のないものだった。渚沙の持っている下着の中では一番新品だ。学校に着けていく下着を選ぶ際、なるべく新しく、地味なものを選んでいた。もしかしたら、こういう展開になることを無意識に予想していたのかもしれない。

(スカートの下に、何も履いてない……。変な感じ……)

スカートの中の開放感に、渚沙は落ち着かない気分になる。股間がスースーするし、空気の流れをはっきりと感じる。

頭がくらくらする。頬が熱い。きっと、今の自分は耳まで真っ赤になっているだろうと渚沙は思った。

姫子の手が伸びてきて、ショーツをひったくる。

まだ肌の温もりが残っている下着を、姫子はしげしげと眺め始めた。

「ふーん。今日は白なんだあ。なんかつまんないなあ」

好き勝手なことを言いながら、姫子はショーツを裏返した。渚沙は顔を真っ赤にして、俯いてしまう。股間が触れていた部分を見られるだなんて、こんなに惨めなことはない。

「ねえねえ、これ見てよ。ここ、なんか黄ばんでるんだけど」

「わ、ホントだ」

姫子がショーツを莉里とここあに見せつけると、二人は顔を近づけて覗き込んだ。渚沙の股間が直接触れていた部分を、三人は口々に揶揄してくる。渚沙は耳を塞ぎたくなる衝動に駆られた。

「そ、そんなことないっ」

震える声で反論する。しかし、姫子は全く取り合おうとしない。

「えー、絶対黄ばんでるって。ねえ、亜耶ちゃんもそう思うよね」

「確かに、そこだけ変色してるかも……」

姫子に尋ねられた亜耶も、渚沙のショーツを覗き込んでそう答える。亜耶までもが渚沙を辱めるような発言をしていることに、後頭部を殴られたようなショックを受ける。

自分の目で確かめることは、怖くてできなかった。

「早嶋さーん。おしっこしたならちゃんと拭かないと駄目だよ」

「早島さんのこんなパンツ、男子が見たら幻滅するんじゃない?」

「逆に興奮したりして。あいつら変態ばっかだし」

少女たちは渚沙の脱ぎたての下着を隅々まで観察し、きゃっきゃと盛り上がっている。渚沙は羞恥のあまり、頭がおかしくなりそうだった。

姫子は渚沙のショーツを顔の前に持ってきて、クロッチ部分に鼻に当てる。彼女は匂いを確かめるようにクンクンと鼻を鳴らした。

(なっ……)

姫子の突然の行動に、言葉を失ってしまう。そして、その後に姫子が放った一言が渚沙を更なる絶望へと突き落とした。

「ちょっとおしっこ臭いね」

姫子は顔をしかめて、鼻をつまむようなジェスチャーをする。渚沙は、顔から火が出るような思いだった。

(ひどい……)

あまりの仕打ちに、涙が出そうになる。年頃の少女にとって、体臭は最もデリケートな話題だ。自分の匂いを、他人に嗅がれるなんて、これほど恥ずかしいことはない。ましてや、股間の臭いを揶揄されるのは、渚沙の羞恥心を限界まで刺激した。

「うん、臭いね」

「くっさーい!」

莉里とここあも、声を揃えて同意する。

最後にパンティーを手渡された亜耶は臭いについて言及こそしなかったものの、顔をしかめて鼻をつまんだ。

渚沙は居たたまれず、「ううっ……」と呻きながら両手で顔を覆う。涙が一筋、頬を伝って流れた。

「は?何泣いてんの?あんたのアソコがおしっこ臭いのは事実なんだけど」

姫子が冷たい口調で言う。莉里とここあも、「ホントだよね」と言って笑った。

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(2020年05月28日)

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