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バイト先の先輩の娘さんとの、波乱万丈な恋物語・番外編19 借金大王(3/4ページ目)
投稿:2022-03-29 06:04:33
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「分かった…ノブノブ。後ちょっとだから、コレだけ終わらさせてくれ」
「了解ッす!」
「…よしっ!すいません鉄さん、味見御願いします!」
「マー坊、器に盛り付けたら休憩だぁ!いいなあ!」
「誠人クン。代わりに私が厨房に入りますから、話し合いに加わってきなさい」
「鉄さん、店長…本当にすいません!それじゃお袋共々、話し合いに行ってきます!」
「あ…店長さん、どうも今晩は。すいません、多少お騒がせするかもしれませんが…御容赦下さいませ」
と言うと俺達親子は…実咲さんを同伴した淑子さんと直人さん、それに波平頭の弁護士さんが着席している6人掛けのテーブルに移動する。
「皆さん、我々の為に貴重な時間を割いて頂き、誠に有難う御座います…」
「いえいえ…」
「…にしても幹雄はんとやらはまだでっか?」
「…本当にすいません。我が父ながら、時間にルーズなところが有って…」
「…全く」
「いやいや姉ちゃん、遅くなっちゃって申し訳…ない…」
…と、そこへ。
ヘラヘラした表情で入店してきた幹雄叔父さんは…突き刺さる様な直人さんと淑子さん、波平頭の弁護士さんに実の娘の実咲さんの鋭い視線に気付いたのか、直ぐに表情を引き締め直す。
「どうも始めまして、幹雄さん。私、こういう者で御座います…」
と直人さんと弁護士さんが、名刺を幹雄叔父さんに手渡す。
「姉ちゃん…弁護士って…」
「・・・」
「幹雄はん…始めまして。私…実咲さんを預かってはる、大学教授元婦人の淑子と申します。以後、お見知り置きを…」
「あー…幹雄さん、とおっしゃいましたか。申し訳有りませんが、この話し合いは今から、全てICレコーダーで録音させて頂きます。御了承下さいませ…」
弁護士さんの宣言で幹雄叔父さんは漸く…自分が文字通り「完全アウェイ」の立場である事を悟った様だ。
「それでは幹雄さん、帳簿と借金返済計画書を御提出頂けますでしょうか…」
直人さんの感情を押し殺した声に…幹雄叔父さんは無言で帳簿の束とレポート用紙を数枚、直人さんに提出した。
その差し出された書類と帳簿に…直人さんは素早く目を通して行く。
「申し訳有りませんが幹雄さん…コレは最早、❝経営❞と呼ぶのもおごがまじい状態ですね。早急に店を畳む事が…❝損を少なくする❞唯一の手段です」
「…え?今…何て言いました?」
「もう一度だけ言います。幹雄さん、アナタのコンビニは最早、赤字を産み出すだけの不良債権です。早急に店を畳む事が…」
「ちょ…ちょっと待ってくれ!そこを何とかするのが、❝公認会計士❞の仕事じゃあ無いのかぁ!?」
「残念ですが…公認会計士は❝赤字を黒字に変える❞魔法使いでは有りません。経営状態を把握し、適切な助言をするのが我々公認会計士の本分です…」
「・・・」
「それにこの借金返済計画書ですが…ハッキリ申し上げて、お話になりません。❝万馬券❞や❝宝くじ❞を当てにしている時点で、目を通す価値も御座いません…」
「すいません…直人さん。その書類…お貸し頂いて宜しいでしょうか?」
「ハイ…美佐代さん」
俺はお袋共々…幹雄叔父さんが書いた「借金返済計画書」に目を通して行くうちに…リアルにめまいがする様な錯覚に陥っていた。
その内容と言えば…早い話が「ぼくがかんがえたさいきょうのしゃっきんへんさいけいかく」としか言いようが無い代物。
寧ろ、「40代のおっさんが良く、恥も外聞もなくこんな書類を提出出来たな」と、逆の意味で感心する位だ。
「幹雄…恥知らずも此処までくれば…大したものよ。実咲ちゃんを売り飛ばそうとか…」
「ね、姉ちゃん?」
「事情は…此処に来る前に、私の事務所で粗方聞かせて頂きましたよ。貴方がなさろうとした事は先ず…❝売春防止法❞と❝児童福祉法❞、それに❝人身売買罪❞に抵触する立派な犯罪行為ですね…」
「み…実咲…お、お前…お父さんが可哀相とは思わないのか?お父さんを助ける為に…」
「幹雄はん…アンタ、自分で何言わはってるか分かってまんのか?」
と、そこで。
沈黙を守っていた淑子さんが、いきなり関西弁全開で幹雄叔父さんに語り掛ける。
「父親を助ける為に我が娘に身を売れとか…アンタ、何時の時代の話してますんや?」
「そ…そうだ…満博さえ大学を卒業してくれれば…満博が自分の跡を継いでくれれば一発逆転間違い無しなんだ!」
「甘ったれた事ほざくのも大概にしなはれや。❝希望的観測に基づく楽観的見通し❞言うんは、人の上に立つ者が絶対したらアカン事ですよってになぁ?」
「し、しかし…」
「しかし…何ですのん?」
「俺に今更…❝雇われる側に戻れ❞と言うんですか?それだけはまっぴら御免だ!俺は…仕事の成果がキチンと評価される自営業で勝負したいんだ!」
「せやからそれが、❝甘ったれた考え❞言うてまんのや。実咲さんに伺いましたわ、身内やから言うてタダ働きさせてたらしいでんなぁ?身内をコキ使わな回らん自営業なんぞ、評価にも値しまへんわ…」
「・・・」
「大体幹雄はん。アンタ…自慢の倅はんが大学で何やらかしたんか、知りまへんのんかぁ?」
「え…?満博が…?」
「オイ、けんめー!彼を連れて来てくれ!」
「了解しました!」
返答した健命クンが事務所から連行して来たのは…しょんぼりした表情の茶髪の兄ちゃん。
「幹雄さん…この満博は、俺が所属しているサークルの活動費用を使い込んでいたんです。それも…キャバクラにですよ」
「本…当か、満博…?」
「コレが…その証拠です」
と言いながら健命クンは…コック服のポケットからしわくちゃになった、キャバクラの領収書を数枚取り出す。
「・・・」
「親父…すまない…」
「お父さん…」
「幹雄はん…言うなれば今のあんさんは❝血も涙もない鬼❞になる一歩手前や。せやけどなぁ…今やったらまだ…❝人間として❞誇り高く死ねますわ」
「鬼…ですか、淑子さん…」
「幹雄はん…どっちか選びなはれ…❝人間として死ぬ❞か、❝鬼として首をちょん切られる❞か…」
「ううっ…ううっ…」
「親父…」
「お父さん…」
「う…ううっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!」
突如として奇声を挙げた幹雄叔父さんはへなへなへなと…床に手を付いてへたり込む。
「お父さん…どうして…どうしてこうなっちゃったの…」
幹雄叔父さんに駆け寄った実咲さんが…独り言の様に虚ろに呟く。
「実咲さん…」
「お父さん…コンビニなんかやんなければ…昔みたいに家族4人、細やかだけど平凡に暮らせていたのに…」
「実咲ちゃん…」
「なのに…なのに、コンビニを始めてから、お父さんは淑子さんが言う様に…❝血も涙もない鬼❞になっちゃった…」
「実咲…」
「私…本当にお父さんを尊敬していたんだよ…ちょっと御人好しで頼りないところは有ったけれど、何よりも私達家族を大切にしてくれていたお父さんを…」
「・・・」
「だけど…だけど今のお父さんは…自分の事と、売り上げの事しか考えていない、文字通り❝血も涙もない鬼❞だよ…お父さん…」
「実咲ちゃん…」
「もう…諦めようよ、お父さん…❝ほんの数年だったけど、良い夢を観させてもらった❞…そう思えば良いじゃない、お父さん…」
「実咲…」
「実咲ちゃん…見事な介錯っぷりですわ。幹雄はん、どうやら…諦めついたみたいどすなぁ…」
「あ…あぁ…はい…」
「そう致しましたら…精算手続きは私の会計事務所と、こちらの弁護士さんの法律事務所が仕切らさせて頂きます…宜しいでしょうか?」
「…はい、分かりました…」
「幹雄…」
「幹雄叔父さん…」
「あぁ…俺の、夢の城…」
「幹雄はん…結局幹雄はんは、❝人の上に立つ人間やなかった❞ちゅう事ですやろな。❝授業料❞と呼ぶには余りにも高過ぎる出費やったけど…これで何かを学んだ思えば、無駄な出費にはなりまへんえ…」
「淑子さん…」
「ううっ…ううう…」
「…親父。俺がこんな事言うのもアレだけどさ…金ならまた汗水垂らして働けばいいじゃん!」
「満博…」
「親父…俺、大学辞めて働く。取り敢えず…サークルのお金を返済したら、稼ぎの幾らかは親父に渡すから…」
「お兄ちゃん…」
「満博…済まない…本当に…それに実咲…済まなかった、本当に済まなかった…」
「…やめて、お父さん。お父さんのその土下座に…どれほどの価値が有るって言うの?」
「実咲ちゃん…!」
「借金で心がおかしくなっていたとは言え…勝手に風俗嬢にさせられそうになったコッチの身にもなってよ!もう私…お父さんの事、父親としては見られないよぉ!」
「実咲ちゃん…」
「お父さん…悪いけど、アタシ…暫くお父さんと距離を置こうと思う。もう一回、❝父親❞として向き合える様になるまで…。それが5年後になるのか、10年後なのか、それとも…お父さんのお葬式の時になるのかは、分からないけど…」
「実咲さん…それがエエと思いますわ。実咲さん自身…一度自分を見つめ直す時間が必要みたいですからなぁ…」
「実咲…」
「それに…幹雄はん。許すか、許さないかを決めるのは実咲ちゃん自身ですわ。土下座する位やったら…取り敢えず、汗水垂らして働きなはれ。話はそれからですわ」
「・・・」
「…幹雄はん。実咲ちゃんは引き続き…ウチがマンションで下宿させますよってに。宜しおすなぁ?」
「分かりました…淑子さん…」
「お父さん…アタシ、本当にお父さんを尊敬していたんだよ。本当に…本当に…」
「実咲ちゃん…」
・・・
「おっ、誠人か!?娘さん…すっかり大きくなったなぁ!」
「あっ…先生!御無沙汰しています!」
「ねーねー、おとーたん!このおぢたん…だあれ?」
「この人はね…お父さんが高校生だった時に御世話になった先生だよ」
「せんせぇ、どぉも!そのせつはおとーたんがおせわになりまちた!」
「み…美花子!」
「あ…節子さん、ですか?お気になさらず…」
此処は俺の母校の学園祭。
せっちゃんと子供達は歩クンのクラスの模擬店で、俺が3年生の時の担任の先生に声を掛けられていた。
クラスメートと先生は、俺とせっちゃんが遭遇してしまったあの「忌まわしい出来事」を知ってからは…聖羅先生共々メンタル面で俺をサポートしてくれたのだ。
「にしても…誠人が3人の子供の父親かぁ…道理で、俺が歳を取る訳だわ…」
「アレですね…せっちゃん、4月に赤ちゃんを出産しますんで…もうすぐ4人の子供の父親ですね…」
「せんせぇ、せんせぇ!こんどうまれてくるあかちゃんねぇ…みかこ、い〜っぱいかわいがってあげるんだよ!(・∀・)」
「はやともいっぱいかわいがる〜(・”・)」
「さちこ…おねえちゃん…(・@・)」
「先輩に奥様…すいません、長らくお待たせ致しました!」
と言いながら歩クンは、塩ダレ焼きそばを俺達バカ夫婦に配膳する。
「それじゃすいません…頂きます!」
「頂きます!」
ぱくぱく、もぐもぐ。
「美味しい!」
「本当だ…凄え美味い!」
「有難う御座います!」
「美花子…早矢斗…食べる?」
「うんっ!」
「はやと、やきそばたべたい!」
「それじゃ、ちょっと待ってね…ほら美花子、ハイどうぞ」
「わーいわーい、しおだれやきそばおいちい〜♡」
「ほら早矢斗…焼きそばどうぞ!」
「おいしー!」
「先輩…そして皆さん、有難う御座います!」
「ところで誠人。聖羅先生の結婚式だけど…」
「この間…自分の家でやってる女子会の時に報告が有りました。来年の6月に式を挙げる事に決まったと…」
「らしいな…誠人は勿論、出席するんだろう?」
「勿論ですよ。せっちゃんの❝あの一件❞では本当に、御世話になりましたから…」
「そうですね…聖羅先生には本当に、感謝しています…」
「おっ、やっぱり来てたか❝バカップル❞のお二人さん!」
…と、そこへ。
腕を組んでラブラブっぷりをアピールする、慎也と千夏の「美女と野獣」カップルが模擬店に入店して来た。
「あ…先生!どうも、御無沙汰してます!」
「おっ、慎也に千夏!お前達も、結婚するんだってなぁ!?」
「ハイ…」
「有難う御座います…」
「それで…式とかは…」
「まだ…本決まりでは無いんですけど、誠人が働いてる洋食レストランで式を挙げようかと…」
「今流行りの❝レストランウェディング❞ってアレか…」
「はい…誠人クンとせっちゃんの結婚式に出席して…❝アタシも、こんな心温まる結婚式したいなあ❞って…」
「本当に良いんだな、お二人さん?店のキャパ考えたら…本当に出席者厳選する事になるぜ?」
「アタシ達は…家の見栄の為に式を挙げる訳じゃ無いから。二人の旅立ちって言うか…その、上手く言えないけど、❝新生活の船出をみんなに見て欲しい❞って感じかな…」
「…確かにな。結婚式がゴールじゃ無い、寧ろスタートだからな。ま、慎也と千夏だったら大丈夫とは思うけどな…」
「あっ…先輩!どうも今日は!」
「節子サーン、誠人サーン!ドーモ、御無沙汰してマース!」
…と、そこへ。
辰也クンと紗里依ちゃんの「バカップル」が、お手々を繋いで模擬店に御来店。
「アッ、センセー!ドーモ御久し振りデース!」
「おっ、紗里依ちゃん元気そうだなぁ!どうだ、アニメーターの勉強は順調か!?」
「オカゲサマデー!コノ調子なら、都内のアニメスタジオにシューショク決まりそうデース!」
「そうか…そりゃ良かったな!おい辰也、紗里依ちゃんをしっかり支えてやれよっ!」
「勿論です!紗里依ちゃんと俺と…二人三脚でお互い、支え合って頑張っていきます!」
「辰也クン…♡」
「先輩すいません!塩ダレ焼きそばお待たせしましたっ!」
「有難う。それじゃ…頂きます!」
「イタダキマース!…Oh、メッチャ美味しいデース!」
「本当!俺が作った焼きそばより、美味しいかもしれない!」
「辰也クン…ハ〜イ、ア〜ンシテ…♡」
「はい、ア〜ン…」
「辰也クン…美味しい?」
「勿論。それじゃ紗里依ちゃん、ア〜ンして?」
「ハイ、ア〜ン♡」
「あらあら、お若いお二人さん…見せ付けてくれますなぁ…」
聞き覚えの有る関西訛りに振り返ってみると…実咲ちゃんを同伴した淑子さんが立っているではないか。
辰也クンと紗里依ちゃんはバツが悪そうに…顔を真っ赤っ赤にして俯向いてしまった。
「奥様、御無沙汰しています!」
「誠人さん、どうも今日は!その節は、大変御世話になりました!」
「いえいえ、自分はただ直人叔父さんと弁護士さんを紹介しただけですから…」
「でも、そのお二人を御紹介して頂かなかったら…」
「すいません、塩ダレ焼きそばお待たせ致しました!」
「それではすいません…頂きます」
「…美味しい」
「…本当ですか?有難う御座います、それもこれもみな、先輩からお借りしたレシピのお陰です」
「いや…偉いのはレシピを作った自分じゃない。レシピ通りにメニューを作り上げた調理スタッフのみんなだよ」
「そんな…もったいない言葉を有難う御座います!」
「お知らせ致します。間もなく、体育館にて行われる❝ドリームトレインライブ❞午後の部が開演致します。御興味の有る方々は是非、体育館に足をお運び下さいませ。繰り返します…」
「え…もうそんな時間!?」
「誠人さん…早く体育館行こっ♡」
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