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体験談(約 61 分で読了)

【殿堂入り】【お勧め】自ら命を断とうとしていた、中性的なボーイッシュな女の子を助けた話(1/7ページ目)

投稿:2016-05-16 06:16:37

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本文(1/7ページ目)

Kou(30代)

はじめまして、自己紹介させていただきます。

自分は30代男で名前はコウ。

168センチ53キロの痩せ型、過去に写真から紹介してほしいと言われた事があったので顔はまぁ悪くはないと思います。

てか思いたい・・・。

相手の女の子については仮名ではありますが、後ほど紹介していきます。

長文ではありますが、退屈しのぎの一端となれればこれ幸いです・・・。

それでは、よろしくお願いいたします。

今から8年前のもうすぐ春を迎える頃。

風のように自由になりたい・・・とまあ、中二病ばりの思考の元、俺は大型自動二輪免許を取得してローンで新車のカワサキZX-14seを購入。

要介護よろしくとばかりに平日は出勤前にはにやけ面で愛馬を眺め、休日には早朝からミラーからカウルの隙間に至るまで丹念に磨いたり、近場から隣県まで一人で乗り回したりするのが休日の過ごし方になってました。

あれは納車から二ヶ月ほどたったある晴れた昼下がり・・・その日はツーリングとライディングの練習を兼ねて峠道を走っていた。

その峠道は新しい道路ができてから日曜日でもほとんど車の通行がなかった為、練習にはとても最適だった事もあり、ここ最近のお気に入りのスポットになっていた。

いつものように頂上付近のあぜ道にバイクを停め、人気もなく暑かったこともあり、上着のチャックからズボンのホックとチャックに至る所までも全開にし、涼を感じながらコーヒー飲んでタバコを吹かしながらぼーっと下界の街並みを眺めていた。

緑の木々が立ち並ぶ中、俺の立っている所から下り方向へ少し離れた場所に一ヶ所だけ色彩の合わない物が目につき視点を合わせた所、そこからとんでもないものが視界に飛び込んできた。

もう少し詳細を話すとその峠道はハングライダーと呼ばれる紙飛行機のような形状をした機体に人間が取っ手に掴まり機体に繋がれているベルトを腰に巻き、吊り下がった状態で大空を滑空する。

というスカイスポーツができる山でその空へ飛ぶために何ヶ所かに助走台が設置されてる。

まぁそれだけなら別に何という事はないけど、問題はその助走台の先端付近に女の子が一人佇んでいたという事。

どう見てもフライトを行う格好には見えず、何よりもあの紙飛行機のような機体どころか機材を運ぶ車両の影も形も見当たらない。

「・・・マジかよ?!」

焦った俺はまだ半分ほど残っていたコーヒーの缶を投げ捨てるように放り出し、慌ててその女の子の元へ駆け出していった。

(んとにマジ勘弁してくれよぉ・・・?!目の前で飛び降りでもされた後味わりーぞ!!)

そんなことを呟きながら女の子の近くまで来たが、さてどうしたものか・・・?

いきなり声を掛けるのは危険だと判断した俺は、ふとその助走台が木造であることに気がつき、踏み込んだ際に軋み音を奏でる事にピンと閃き、わざと大袈裟に踏み込んで音を立てながらゆっくり近づいた。

「?!」

その音に気がついた女の子が驚いたようにこちらを振り向いた。

「あ・・・」

(だるまさんがころんだ!)

俺の頭の中でそんなフレーズが流れ、俺は反射的に硬直してしまった。

女の子は俺を警戒して睨むような感じで俺を見ていた。

「あ・・・いや!あ・・・怪しい者じゃないです!!」

俺は両の手のひらを顔と同じくらいの位置に上げ、敵意はないとばかりにはにかんだ笑顔を見せた。

しかし・・・万が一の転倒によるリスクの軽減の為とはいえ、俺のその時の服装は漆黒のダブルレザージャケットにプロテクター入りのレザーパンツに安全靴のようなライディングブーツ。

さらに分かりやすくいえば

「ヒャッハー!!」

とか喚く輩が出演していて、それらがシリーズ化するくらい有名な某洋画の主人公さながらの出で立ちである・・・。

ただでさえこんな寂しい峠道で不意に人に出くわす事で不安が募りそうなものなのに、素性も事情を知らない者がこのような武装したような格好で、しかもヘラヘラした表情で話し掛けられれば警戒されるどころか

「お巡りさんこっちです!」

などといきなり警察に通報されてもおかしくはないだろう・・・。

一方の女の子は、前髪が長めのショートカットで吸い込まれそうな大きな瞳にバランスのとれた鼻筋に少しだけ薄い唇。

中性的なかっこかわいいボーイッシュな感じの可愛い系の女の子。

伸長は150から155センチ・・・くらいだろうか。

体重は不明だが、見た目やせ形、灰色っぽいスキニージーンズにトップが水色のパーカートレーナーに白いスニーカーっていうラフな感じ。

バストについてはマニアではないのでハッキリとはわかりませんがおそらくCくらい・・・かなと・・・。

(女は長髪だろ?!)

なんとも自分勝手な俺のその信念はその女の子を目の当たりにしてあっという間に覆された。

それでも元々可愛い系が好みである俺にとっては文句のつけようがないくらいタイプの女の子であり、その顔を見たときはほとんど一目惚れのような感覚だった。

「えっと、そこからだと何か特別なものでも見えるのかなぁって気になって・・・あ、俺はコウって言います!てかナンパとかそんなんじゃなくて・・・」

人助けの為に説得するつもりがモロタイプの女の子を口説くのに己を必死にアピールしてるが如くの自分に対し、

「・・・あいてる」

女の子は俺に返事をした。

「え?!あい・・・てる?!え・・・?」

パニックった俺には何がなんだかわからない・・・。

「・・・ズボンのチャック開いてる・・・」

「・・・はっ?!しまったぁ?!」

俺は下を向いた時チャックが全開の上、下着である柄パンが"社会の窓からこんにちは"とアピールしていた。

「ち、違うんだ!これ、さっき、暑かったから涼む為に開けただけっ、閉め忘れただけで露出の趣味とかは決してなくて、ちょっ、ゴメンなさい!!」

俺は半身をひるがえして慌ててチャックを上げようとするも、革パンツゆえ固くてなかなか上がらない。

それでもチャックを摘まむ指に持てる全て力と想いを込め、なんとか上げきり、そのまま振り返った時、女の子が俺の近くにいた。

「あ、あのっ・・・」

「・・・今日は止めときます」

(止める?何を?ハングライダーじゃなくて・・・?!それとも下見だったとか?)

口に出す言葉をあれこれ思考していたとき、

「・・・バイク、乗ってるんですか?」

女の子は遠くに停めてあるバイクを眺めながら俺に聞いてきた。

「う、うん。そこに停めてあるのがそう。その為にこの格好してたんだけどね!・・・っていってもまだ乗り始めたばかりでまだ慣れてないんだけど・・・」

「・・・一度、乗ってみたかったな・・・」

答え終わるかどうかの合間に女の子は呟くように言った。

「え・・・?あ・・・うん!ハクを付ける意味も込めて是非!乗ってあげて下さい!!へぇ、意外だなぁ!おねーさんも免許持ってたんですか!!」

妙なテンションで捲し立てるように話していると

「・・・あたし、免許持ってない」

バイクの方角を見ながら女の子は首を横に振った。

「あ・・・そうなんだ。いやなんていうか早とちりでしたねうん!あはは・・・」

はい撃沈・・・。

「・・・嫌じゃなかったら・・・後ろに乗せてほしいな・・・」

女の子は俺の方を振り向いた。

「・・・後ろ?ってそれは二人乗りしてくれって・・・こと?」

「うん・・・さっき友達とケンカ別れしちゃったから・・・」

「そ、そうなんだ・・・」

(てか俺ヘルメット一個しか持ってねーし免許とって二ヶ月しか経ってないし二ケツは免許取って一年しなきゃダメだって教官がね・・・)

「・・・ダメ?」

「いいえ!全然オッケーです!!」

俺は今できる最高レベルの気取り顔に左手で作ったピースサインを添えて力強く快諾した。

「ありがと・・・」

女の子はちょっとだけ微笑んでんでくれたような気がした。

モロにタイプの女の子のお願い事を断る勇気など俺にはなく、例えそれが原因で警察に捕まって処分を受けようが名誉の負傷と甘んじて受けてやろうじゃないか。

その後、俺は女の子に後ろに乗車する為の簡単なレクチャーをした時に聞いてみた。

「あの、もしよかったら名前を教えてもらっていいかな?おねーさんって呼ぶのもなんかぎこちないし・・・」

「あっ、少女Aってのもなしで!」

「クスッ・・・あたし、綾(あや)って言います」

「綾ちゃんかー。良い名前だね!」

「そうかな・・・?あまり気にしたことないけど・・・」

綾は少しだけ笑ってくれたけど、未だ警戒してるようで返事が素っ気ない気がした。

まあ、当然といば当然かと・・・。

いくら信用してくれなんて言っても相手の事ほとんど知らないんだから・・・。

「じゃあ出発するね!綾ちゃん。ヘルメットキツいかもしれないけど大丈夫?」

「うん、大丈夫」

俺は慎重にバイクを動かし、来た道をゆっくり戻っていった。

途中、俺の背中に綾の胸が当たる事があったが安全の為、ボディープロテクターを着けていたのが仇となる・・・。

つまり綾のバストアタックはプロテクターに全て吸収されてしまい、俺の背中に伝わるのはグッジョブしてくれといわんばかりに押してくるゴツいプロテクター・・・。

(ツイてねぇ・・・)

そうこうしてるうちにあっという間にふもとに降りて、バス停の辺りで背中を軽く3回叩かれた。

この合図はレクチャーしたときに教えておいた事で、停車して欲しいときは背中を3回叩いてと言っておいたのだが教えなきゃ良かったかな・・・とまぁよからぬ事を思いながらもバス停近くにバイクを停めて綾を降ろした。

「あの、あたし今、あまりお金持ってなくて・・・」

綾は財布を取り出そうとしてた。

「いやいやいやいや!お金なんて要らないって!!そんなつもりで乗せたわけじゃないし、むしろ乗ってくれたのが何よりの報酬だから気にしないで!」

俺は両の手のひらを綾に向けながら慌てて断った。

「・・・優しいんですね」

綾は微笑みながら返事をした。

その顔を見たとき思わず口に出てしまった。

「あのっ、綾ちゃん?今度・・・ていうか来週の日曜にバイクでどっか行かない?!見返りとかお礼にとか、そんなんじゃなくて・・・その・・・ダメだったらダメで仕方ないんだけど・・・」

言っちまったよ・・・。

でも言わないで後悔するくらいなら言って断られた方がずっといい。

綾はちょっとビックリした顔をしてうつむいてしまった。

(・・・ダメか・・・)

「・・・いいですよ」

「えっと・・・いいですよって・・・どっちの・・・かな?」

「あ、ごめんなさい!オッケーって意味です」

綾は先程、俺が見せたオーケーのポーズを真似しながら表現してくれた。

違うのは首を少し傾けながらちょっとだけ恥ずかしがりながらはにかんだ笑顔・・・。

綾が見せてくれた笑顔に身体に強烈な寒気を受けた時のような衝撃が駆け巡った。

(俺・・・マジ・・・惚れた・・・)

「そ、それじゃ!どっか行きたいところのリクエストある?!」

綾に気づかれないよう平静を装いながら綾に問いかけた。

「・・・海が見たいな」

綾は少し考えてこう返事をした。

「了解!それじゃあ・・・」

その時、運悪くバスが来てしまった。

なんという不幸か・・・。

その時、綾は両腕でバッテンマークを作って乗る意思は無い旨をバスに伝えた。

バスは軽くクラションを鳴らしてそのまま通過してしまった。

「あ、綾ちゃん?いいの?!」

俺は走り去ってしまったバスを跡目に次のバスの通過時間を調べた。

「だってまだ決まってなかったから・・・」

綾はちょっとだけすねたような感じで応えた。

「そ、そうだね。えっと次のは・・・げっ!1時間30分後じゃん?!」

俺は独り言のようにバス停に向かって話していた。

「しょうがないよ。あたし待ってるから」

綾は諦めたような口調で俺に話し掛けた。

「・・・うーん・・・あっ!そうだ!」

俺はある妙案が浮かんだ。

「なに?」

綾は不思議がってる。

「綾ちゃん!必ず戻ってくるから30分ほどここで待っててくれる?!」

「えっ・・・?」

俺の言葉に綾は目を大きく見開いた。

(か、可愛い・・・)

思わずチューしたくなってしまいそうな衝動を理性と言う名の盾で弾き飛ばし、

「えと、戻ったら話すからここで待ってて!30分!30分で戻るから!!」

俺はグローブをはめ、ヘルメットをかぶりながら綾に伝えた。

「それじゃっ、行ってくるね!」

綾からの返事を聞かずして俺は飛び出していった。

(そうだよ!この手があったよ!無ければ調達すればいいんだ!!)

俺はある場所を目指して高速でバイクを走らせていった。

「こんにちは!!」

10分ほどでその場所に到着したが、まったり走れば20分くらいかかる距離を半分の時間で来てしまった。

「おー!コウ君。いらっしゃい。あれ?バイクに何か問題あった?」

そこは俺がバイクを購入したショップで、店内には所狭しとバイクやパーツが並んでおり、奥のカウンターをはさんでオーナーの橋本さんがにこやかに出迎えてくれた。

実は今朝、バイクのオイル交換と挨拶がてら寄って行ったのたが・・・。

「いえ、全然!バイク自体は絶好調でして・・・あのっ!ジェットヘルメットはありますか?!」

俺は店内を見回しながらジェットヘルメットを探した。

「どしたん?ヘルメット壊しちゃったの?!それにコウ君ってフルフェイス派じゃなかったっけ?」

橋本さんはカウンターから身を乗り出しながら俺に訊ねた。

ジェットヘルメットというのは頭から耳、頬までを守るヘルメットのことで、フルフェイスと違い、顎の部分はつながっていないヘルメットの事。

「いえ!早急な用事でヘルメットが入り用になったんです!!」

俺はヘルメットコーナーにあるいくつかのヘルメットを手に取りながらサイズを調べた。

「これだ!・・・あの、これ下さい!」

俺が選んだ黒いジェットヘルメットは女の子が被るには硬そうなイメージだったが、他の店となるとかなりの距離があり、何より綾を待たせている以上、贅沢は言ってられない。

俺は橋本さんにジェットヘルメットが入った箱を手渡した。

「あのっ、今お金持ってなくて用事が済んだら必ずお支払しますので・・・」

「りょーかいりょーかい。次来てもらった時でいいよ。箱置いてく?」

橋本さんは快諾しながら箱を開けてくれた。

「ありがとうございます!助かります!」

俺は頭を下げながら橋本さんに感謝の意を伝えた。

「はいよぉ。あっ、ちょい待ち!コウ君」

ヘルメットを受け取って駆け出そうとした橋本さんが俺を引き止めた。

「え、なんすか?」

俺は慌てて振り返った。

「慌てちゃダメだよぉ、事故ったり捕まったりしたら待たせてる相手に迷惑かけちゃうからね?ただでさえコウ君のバイクは速いんだから。慌てて急ぐんじゃなくて落ち着いて迅速に!だよぉ」

橋本さんに諭されて俺は気付かされた。

所有バイク、ZX-14SEはノーマルありながら北米産フルパワー仕様であり、死ぬ気でアクセルを全開にすればわずか2秒で時速100km/hはゆうに超え、リミッター(速度抑制装置)が効いても時速300km/hを叩き出すモンスターマシンである。

(参考までに・・・一般乗用車で最高時速180km/h。日本最速のジェットコースターで時速172km/h。世界一最速のジェットコースターでも時速240km/h)

そんなバイクを相手に免許取り立てのコゾーが浮き足だった気持ちで乗っていられるほど甘い乗り物などではない。

「すみませんでした・・・」

俺は橋本さんに再び頭を下げた。

「深呼吸してからね。はい!いってらっしゃい!!」

橋本さんは笑顔で少し低音を利かせた口調で俺を送り出してくれた。

「・・・ふう・・・よし!」

俺はツケで買ったヘルメットをバイク本体のメットホルダーに装着しながら深呼吸を繰り返し、静かにアクセルを開けながら綾の元へと再び駆け出した。

行きの時より約5分ほど遅れて綾がいるバス停に近づいてきた。

「綾ちゃん!」

綾の姿を確認できたときは嬉しかった。

否応なしハンドルを握る手に力が入る。

綾も俺の姿を確認できたらしく、肩くらいの位置で手を振ってくれた。

対して俺は耐久レースにゴールした時のように左腕を大きく振ってそれに応えた。

「待たせちゃってごめんね!綾ちゃん」

「どこに行ってたの?」

綾は俺に訊ねた。

「えっと・・・はい、これ」

俺は綾の質問に答える前にジェットヘルメットを差し出した。

「えっ?!どうしたのこれ?!」

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(2020年05月28日)

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