体験談(約 31 分で読了)
ありふれた幸せな夫婦が狂っていっただけの話①(1/4ページ目)
投稿:2025-06-12 17:46:19
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冬にしては少し暖かい5年前のクリスマスイブ前日…元嫁から突然離婚を突き付けられた。
学生時代からの付き合い。奥手な2人が関係を持ったのは付き合って2年目の高校一年のクリスマスイブ…もちろん互いに初めてだった。
大学院を出て就職…そして結婚。特に劇的なイベントも無くごく平凡なありきたりな2人での人生だった。お互いを理解し尊重し夫婦仲も良好…喧嘩すらした事も無かった。
元嫁の事は性格も外見、顔もスタイルも全てが大好きで大好きで他の女性どころかアイドルにも興味なんて持たない位に元嫁一筋…本当に好きだった。
元嫁の事を常に思い遣り家事も仕事も元嫁との生活を優先しつつ必死で頑張っていた。
元嫁も彼女なりに俺を愛してくれていたと思う。俺の勝手な思い込みだとしても元嫁からの愛情も確かに感じていた。
あの頃は何時も2人の未来や夢を互いに語り、趣味に旅行に…人生を共に楽しんでいた。特別裕福でもなければ貧乏でもない、経済的にも困ることは無く、とても良い夫婦生活だと思っていた。
それが突然全て崩壊した。
その日は突然だった。
仕事を終えて家に帰ると、元嫁とスーツ姿の中年男性が家にいた。リビングのソファに元嫁と2人で並んで座っている。
俺は目の前の異常な状況と突然の事で誰かも分からず動揺していた。
リビングのソファに元嫁と並んで座る中年男性が、元嫁の手を握ると覚悟を決めたかの様に、少しだけ頭を下げ強い語気で俺に語り始めた。
「奥さんと別れて下さい。」
「は?え?」
「ごめんなさい…アナタ…離婚して…」
「え?え?意味がわからない?明日のクリスマスコンサートは?」
頓珍漢な言葉しか出てこない俺。
「突然申し訳ない。私は美咲さんの上司で神浦と言います。実は3カ月前、美咲さんと想いを重ねてしまい結ばれてしまいました。」
「え?結ばれる?え?何?ミサちゃんどういう事?」
「ごめんなさい…」
「え?結ばれる?何?え?」
「あ〜その…男女の関係…つまり、私と美咲はその…セックス…そう、セックスしてしまったのです。」
「不躾に意味が分からない!ミサちゃん?」
「ごめんなさい…私…神浦さんと…セックスしました…」
「な、何で?え?俺なんかした?」
「うう…ん、何も悪くないよ…」
「それに何だよ!なんでミサちゃんはそんな男の隣に座ってんだよ!コッチに座るべきだろ?それにセックスって!」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「ご主人、落ち着いて美咲が困っています!」
「俺が悪い様に言うな!」
「ごめんなさい…アナタは本当に悪くない…でも…離婚して欲しい…」
「そうです離婚していただきたい。」
「一度や二度の過ち…許せないけど!許せないけど!離婚なんてしない!俺はミサちゃんが好きなんだ!愛してるんだよ!」
「いい大人が子供みたいにわがままを言うな!それに美咲とは一度や二度の関係では無い!」
「な?…本当かミサちゃん?何度も?」
「はい…3ヶ月の間…仕事の日は殆ど、殆ど神浦さんとセックスしていました…ごめんなさい…」
「俺ともしたじゃん!」
「うるさい!黙って話を聞け!」
「何だと!」
俺は拳を握り締め神浦に飛びかかろうとする。
「やめて!酷いことしないで!」
元嫁は俺に持っていたバッグを投げつけると神浦の前に立ちはだかり身体でヤツを庇った。
その行動に俺より神浦の方が大切なんだ愛しているんだと実感する。
「何があろうと離婚はしない!浮気の慰謝料も請求する!」
「離婚してもらわないと困るの…だって…」
「なんで困るんだ!」
「…妊娠してるの…」
「え?に、妊娠…?誰の…」
「もちろん…神浦さんの…毎日生でセックスしてたから…」
元嫁が母子手帳とエコー写真を取り出し俺の手に渡す。
元嫁の名前の母子手帳…小さな粒の様な萌芽が芽吹く元嫁の子宮を映した白黒のエコー写真…腕から頭に掛けてゾワゾワした悪寒が虫のように這いずり周り、俺にはどうする事も出来ない現実が襲い掛かる。抗えない現実に絶望し力が抜けていく。
「分かってもらえたかな?じゃあ帰るぞ、美咲!」
ソファから立ち上がる元嫁と神浦。
「帰るも何もお前の家はここだろ!美咲!」
「ごめんなさい…後、これ返すね…」
俺がプレゼントした結婚指輪と記入済の離婚届を置いて元嫁は神浦と家を後にした。
後日、神浦に雇われた弁護士と俺が雇った弁護士が話合い、嫡出否認と離婚が成立し僅かな慰謝料が支払われた。
俺と美咲との関係がこんな端金で奪われるなんて余りにも理不尽…俺は世の中全てを憎み、仕事も辞め引き籠もった。
翌年正月…入籍し出産した元嫁と神浦…そして女の赤ちゃんの写った年賀状が嫌がらせのように家に届いた。
詐欺の手紙や借金の督促状なんかより遥かに俺を苦しめる最悪の郵便物だった。
無職で腐っていた俺…見兼ねた友人が気分転換に自分が勤める会社にバイトで俺を半ば強引に引き入れた。
そこは地方では一番の大企業だった。
初めはバイトだったが、元々希少なスキル持ちだった俺は上司や幹部に強引に正社員に登用され嫌々ながらも出世街道に乗ってしまった。
そしてある分野の責任者になり、その部署の外注企業の孫請けに元嫁が働いていた会社を見つけた。
もう見たくもない関わりたくもない元嫁達の事。
俺は同業他社の友人を伝に部署の外注企業を一新した。
正直、移管作業は大変だったが過去のトラウマを仕事にまで影響されたくない。
しかし、切られた外注企業には死活問題だった。
その企業と孫請けはウチの社の業務が専属みたいものだった。
別に復讐でも何でもない、ただ俺としては自分の心を守るための選択だった。
上司には全て正直に話した。ウチの社としては社員のメンタルケアの方が大切であり、そもそもそんな社員がいるような所との取引はコンプライアンス的にも問題があり、俺の外注切り替え案は受け入れられた。実はこれは社としては建前だろう。本当は長年の随意契約で高騰していた外注費が半分以下になったのが一番の要因だ。
しかし、人の口には戸は立たぬ。
瞬く間にこの話は広まり、孫請けにいた神浦と元嫁は外注先の親企業を含め100人規模の人間の職を奪った元凶として地獄に落ちる事になった。
当然、社員には家族もいる。被害者はその数倍だろう。
1週間もしないウチに家族の幸せの全てが詰まった元嫁達の家は放火され跡形もなくなった。
幸い、飼っていた犬が死に神浦が顔に火傷を負った程度で元嫁とその子供は無事だった。
その話を聞いた1週間後…やつれた姿の元嫁が、俺の職場の前で待ち伏せしていた。
「…久しぶり…」
「…」
「元気にしてた?」
「あんなふざけた年賀状を毎年送ってきておいてよく言うね」
「…?年賀状…?」
「もう、他人だから…それじゃ…」
「まっ、待って…お願い!話を聞いて!」
「聞く話なんて無いよ」
「お願いです!お願いです!お願いです!」
道端で土下座をしようとする元嫁。
「だから…他人と話す事は無いって」
冷たく突き放すも、久しぶりに見る元嫁…過去の楽しかった記憶や元嫁への断ち切れていない想いや未練が溢れ出してくる。
やっぱり…まだ好きなんだ、愛しているんだと実感してしまう。
「人目があるから…」
そう言って仕方なく俺の車が有る駐車場まで連れて行く。
「乗りなよ…」
「い、いいの…?凄い車…」
一人暮らしで給料と投資で金は持て余すほど有った。車くらいしか贅沢も思いもつかなかったのだ。
「別に…こんなのたった3000万程だし」
「凄いね…頑張ったんだ…」
「貴女には関係ないでしょ」
本当は元嫁に褒められて嬉しかった。
別に俺が凄い訳でもなく車が凄いだけなのに、何故か優越感が湧いてきた。
あの日の絶望感、焦燥感、劣等感が薄れて行くようだった。
「…お願いがあるの」
元嫁が俯きながら言い難そうに話を切り出す。
「お願いばっかりだなぁ…図々しい…離婚ならもうしたでしょ?」
弱々しい元嫁を見て意地悪な気持ちになる。
関わり合いたくないと思っていても、復讐心が心の奥底に燻ぶっている事を自覚する。
可愛さ余って憎さ百倍…こんなにも愛しているのに…捨てられてから1日足りとも元嫁を忘れた事なんて無いのに…俺の口からは冷たい言葉しか出てこない。
「う…う…本当にごめんなさい…」
溜めていた感情が溢れたのか泣き出す元嫁。
「なんだよ!?俺が悪者かよ?泣きたいのは俺だよ!どれだけ愛してたのか理解してなかったのかよ!」
「知ってる…知ってるよ…誰よりも愛してくれてた事…」
「ならなんであんな屑以下の男と不倫なんかして!子供まで作って!」
「あの人を悪く言わないで…」
この期に及んで屑を庇い泣きながら手をモジモジさせている元嫁。左手の薬指には俺がやった物では無い指輪が嵌めてある。
「チッ!目障りだな!話なら、その目障りな指輪を外さないと聞かない!」
「そんな…」
「うぜぇ!うぜぇ!うぜぇ!」
思わず乱暴な運転になる。
「外します…だから…落ち着いて…」
「当たり前だろ!俺が誰だか分かってやってんの?お前は!」
感情が全く抑えられない、何処に向かって走ってるのかもわからない。
元嫁が指輪を外す…。
その瞬間、その指輪を掴むと窓から投げ捨てた。
「な!ダメぇ!!」
「そんな安物お前に似合ってねぇだろうが!」
「ひ、酷いよ…」
「酷いのはお前!何の不満も無い結婚生活をブチ壊してガキまで作ったお前と屑だろ!色気違い!!」
言い過ぎた…元嫁は泣きじゃくり話どころでは無くなった。
「ごめん…言い過ぎた…引き返すよ…」
俺は車をUターンさせ指輪を投げ捨てた所に戻った。
泣きじゃくる元嫁を車に残して草むらを掻き分け指輪を探す。
いくら探しても指輪は見つからない。
ブランドのスーツは汚れ手は草で切って血が滲んだ。
「もう良いよ…ありがとう…」
「良くないだろ…結婚指輪なんだろ…」
なんで愛する女が他人の男と結ばれた証である結婚指輪を探しているのか…理由が分からなくなる。
「手…血が出てる…」
痛みなんて感じない、あの日の心の傷が今でもズキズキ痛むから。
「あっ、有った…」
草むらに指輪を見つけた。
「本当?」
泣きじゃくっていた元嫁の表情が少し明るくなる。それほど屑を想っているのだろう。
「はい、どうぞ!ごめんなさいね!」
元嫁の手の平に指輪を渡す。
その時、元嫁は指輪を受け取るより先に俺の傷付いた手を握り指輪は地面に転がった。
「酷い怪我…それに…」
ゴツい高級腕時計で隠していたリストカットの跡を元嫁が手に触れる。
「か、関係無いだろ!」
「関係…有るんだよね…ごめんね…」
元嫁が泣きながら俺に抱きついてきた。
昔と違って随分小さくなった元嫁…華奢な身体が更に小さく、愛おしい。
俺も元嫁を強く抱き締めたい衝動に駆られる…が、俺は元嫁の肩を軽く押して引き離す。
「やめてくれ…お前はもうアイツの嫁なんだ…俺はあんな屑みたいな事はしたくない」
本当は2人で泣きながら抱き合いたかった。
あの日から貯め続けてきた元嫁への実ること無い愛情を吐き出してしまいたかった。
何度も諦めて何度も自分を言い聞かせても忘れられない、嫌いになれない。
苦しくて苦してく辛かった日々。
全て吐き出すチャンスだったのに…。
俺には出来なかった。
屑野郎の元嫁への想いは支配欲、性欲程度だろうが、俺のは違う。俺の元嫁への想いは本当の愛情だったから。
車に戻り行く当ても決まらず走り出す。
「…」
「…で、話は…?」
「もう…良いよ…」
「何?君達の会社の事?倒産したんだってね」
「…」
「その事?」
「…皆…私達がアナタを酷い目にあわせたからって…」
「違うの?」
「…」
「別に…俺の私怨で君達の会社が潰れた訳じゃない」
「…それも知ってる…ウチの会社…前から不正してて…彼も関わってて…」
「訴えなかっただけ有り難いと思いなよ…」
「私も関わってたの…」
「知ってるよ。だから告訴せず契約打ち切り程度で済ましたんだよ。せめてもの情だ。」
「うん…多分そうだと思った…」
「本当…選ぶ男を間違えるから、君みたいな人が下らない犯罪に手を染めるようになるんだよ!」
「彼を悪く言わないで…」
この期に及んでまだアイツを愛してる最愛の元嫁。
悔しくてもどかしくてまた感情がグチャグチャになり語気も強まる。
「で?どうしろと?まさか倒産した会社を俺の力でなんとかしろって?」
「ううん…そんなの無理だって理解してる…」
「じゃあ何?だから何?」
「私達の家…火災保険…少ししか出なかったの…」
「あぁ…放火された件?…仕事無くしたオッサンが自殺して、その娘さんに逆恨みされて放火されたんだったてか?」
「うん…」
「そのオッサン、早くに嫁さん亡くして男手一つで娘さんを育ててたんだってな」
「…私のせいで…」
「違うよ…神浦の屑だよ。アイツのせいだ。アイツのせいでお前は変わった。俺の知ってるお前は不倫や横領なんて人の道から外れた事をする人間じゃあなかった」
女は付き合う男で変わる。中学時代、真面目だった女子がヤンキーと付き合って不良になっていくのを目の当たりにもしたし、ヤンキー女子が真面目男子と付き合いだして国立大学に進学したのも見ている。
「で、何?逆恨みで俺を殺しにでも来たの?それとも家も失ってお金が無くて物乞いでもしに来たの?」
久し振りに遭った大好きな女性に、こんな汚い言葉を掛けたくないのに、次から次へと恨み節が出てしまう。
前の俺はこんな人間じゃあなかった。
元嫁だけでなく俺も変わった。
「…言い難いけど…少しだけ…お、お金…お、お、お金を貸して欲しい…」
彼女の両親は、不倫で妊娠…そして離婚と…世間に後ろ指刺される様な事をした娘を許す様な義父母ではなかった。
離婚当時の義父母の凄まじい怒りは知っている。幼少期からの俺を知る義父母は、俺の誠実さ勤勉さを凄く気に入っていた。逆に義父母に対しても不遜極まりない態度の再婚相手である神浦を快く思う事は無かった。
「…良いよ…貸しても…。でも…返せるあてなんてないんでしょ?」
「…うん…今は無職だし…仕事も…噂のせいで…見つからなくて…」
「アイツは?家族もまともに養えず、自分の嫁を別れた旦那に金の無心させる屑は何をしているの?」
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