風俗嬢のひとりごとー私がキスをする理由ー

唇と唇が軽く触れ合う、あるいは舌と舌を絡め合うそんなキスを私は風俗嬢という仕事柄、ほぼ毎日している。

ラブホテルで初対面の男性と出会って5分と経たないのに唇を重ねる。たぶん、一般的には嫌悪される行為だと思う。

でも、私にとってそれは日常であり、ごく自然な行為。感覚的には挨拶とかサラリーマンで言う名刺交換に近い。

だから嫌だと言う感覚は無いし、寧ろ積極的にしてしまう。いや、それだと気取り過ぎだ。正直言えば私は男性とのキスが好きなのだ。

キスをする直前に私の髪や首筋を撫でる手の仕草と指の感触の優しさ。その意外な程、柔らかい唇の感触、丁寧にブレスケアをしてくれた分かるミント香る口腔から微かに感じとる事が出来る煙草やお酒の匂い。それらにどうしようもないらくらい父性と同時に男性の中にある母性のようなものを感じてしまいクラリとしてしまう。

私は挨拶や名刺交換の仕方ひとつにもその人の人なりが出るようにキスの仕方にはその人の性的嗜好や精神状態が現れていると思っている。

いきなり舌を強引に入れて来る人は女性では無く、風俗嬢を抱きに来ている。だから、その後も比較的乱暴。

鼻息が荒かったり、唇がベチョベチョになるようなキスをする人は全体的に忙しないし、射精する回数も多い。申し訳ないけどパートナーさんとはレス気味なのかなと邪推すらしてしまう。

逆にソフトなバードキスから始まり、上唇や下唇をそっと包み込んでくれるようなキスへと移り、時間を掛けて優しくこちらの唇を開いてゆき、舌を柔らかく入れてくる人は「上手いなぁ」と関心しつつも、受け身より攻め好きだから、風俗嬢的には攻守の時間配分を考えないといけないから結構厄介だったりもする。

やっぱりキスの仕方ひとつからでも少しその人が見えるのだ。

私はそれが好き。

でもキスは唇や舌を、そして互いの唾液を求め合い、心の内側を曝け出し合って、気持ち良さに溺れても良いんだと思わせてくれる淫靡な優しさに満ち溢れてこそキスだ。

だから私は後ろから胸を揉まれつつ、舌を求め合ったり、陰部を優しく刺激されながら唇を重ね合うキスの方が遥かに好きだし気持ちが良い。

たとえお客さんと風俗嬢と言う、その場限りの関係であったとしても、お客さんにはそんなキスを味わって貰いたいし、私自身もそんなキスに溺れたい。

だから私は今日も明日も、そしておそらくは来年もラブホテルで見知らぬ男性と出会い、唇を重ねる。

※前話で評価をくださいました方々、ありがとうございます。すごく驚くと同時に嬉しかったです。

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