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タイトル(約 41 分で読了)

【殿堂入り】【超高評価】
山道に迷って辿り着いた尼寺でミミズ千匹を知り、そのことがきっかけで数の子天井を知って人生が変わった(1/7ページ目)

投稿:2018-10-02 17:20:33
更新:2018-10-02 17:20:33

本文(1/7ページ目)

ソウタさん(20代)

これは、ボクたちが山道に迷って辿り着いた尼寺で、尼僧たちのご奉仕を受けて人生が変わった話だ。

「くそ、どっちだよ!」

かなりイラついたボクは、思わず声を荒げてしまった。

一緒にいるサキとアヤにではなく、自分に。

ボクたちは、山の中で完全に道に迷っていた。

原因はボクだ。

「こっちが近道だよ」

つい格好をつけて、知ったかぶりをしてしまった。

その所為で、本来の道から逸れてしまった。

山道を甘く見ていた。

自分が情けなくて、無性に腹が立った。

それを察してか、アヤが慰めるように言ってくれた。

「ソウタくんの所為じゃないよ」

サキもボクを気遣って言ってくれる。

「大丈夫だよ、きっと、もうすぐだよ」

女の子二人に励まされながら、ボクたちは歩き続けた。

サキとアヤとボク。

三人での楽しいトレッキングになるはずだった。

山道を歩き、ちょっと汗をかいて、日が沈む前には麓に戻っているはずだった。

その予定が大幅に狂っていた。

日は沈み、辺りはもう真っ暗だ。

歩き続けてよいものか、それすら疑問だった。

夜道を歩き疲れ、野宿を覚悟しかけた。

でも、どんな危険が潜んでいるかわからない。

その時、どこか遠くで人の声がした気がした。

「ねぇ、何か聞こえた?」

「たぶん…」

「こっちだ!」

ボクたちは声を頼りに山道を急いだ。

やっぱり聞こえる。

耳を澄ます。

やはり間違いない。

だが、どこだ?

「あそこに明かりが見えるわ」

サキが指差す方向を目を凝らしてみる。

薄ぼんやりと明かりが見えた。

明かりを目指し、さらに先へ進む。

すると、それは松明の灯りだった。

焦りから躓いて転んだりした。

それでも何とか辿り着く。

見ると、山の中なのに建造物が立っていた。

それは、どうやらお寺のようだった。

奥之院地出処ノ庵(おくのいん、ちいずるところのあん)。

暗がりの中で、朽ちかけた門札にそう書いてあるのが見えた。

間違いなく、人がいる。

しかし、門は固く閉ざされている。

どうしたものか。

聞こえていた人の声は、静かな山中に響く読経だった。

時々、おりんを鳴らすような音も聞こえる。

「すみませーん!」

切羽詰まった声をアヤが上げる。

これしかない。

「すみませーん!」

ボクとサキも一緒になって声を上げ、人を呼んだ。

しばらく呼び続けては、耳を澄ます。

そして、再び声を出す。

こうして何度か繰り返した。

すると、いつしか読経の声が聞こえなくなっていた。

息を呑んで待つ。

次に、門の向こうで閂を外す音が聞こえた。

やった!

ようやく開いた門の脇の小さな扉。

出てきたのは、作務衣姿に手燭を持った女性だった。

怪訝そうな面持ちで、お寺の人が尋ねる。

「どちらさまですか?」

「すみません、道に迷ってしまって…」

早口でボクが事情を説明する。

すると、お寺の人は言った。

「生憎、こちらは比丘尼寺で、男子禁制なんです」

ガーン!

女性が入れない山があることは、聞いたことがある。

そして、男性が入れないお寺もある。

男女平等が声高に叫ばれる中、時代錯誤だ。

そうは言っても、こちらも切羽詰っている。

だから、食い下がった。

「この子たちだけでも入れてもらえませんか?」

ボクがそう言うと、サキが言った。

「ソウタも一緒じゃなきゃ、嫌だよ…」

サキはボクの彼女だ。

大学に入って暫くして、ボクたちは付き合い始めた。

そして、アヤはサキの親友だ。

ボクたちに、付き合うきっかけを与えてくれたのがアヤだった。

「いや、このままじゃ、危ないよ」

その遣り取りを聞いていたお寺の人も困った表情だった。

「ちょっと待ってていただけますか」

ボクたちにそう告げると、お寺の人は一旦扉を閉めた。

遠くで狼の遠吠えがした気がした。

いや、そんなはずはない。

ここは日本だ。

「ここで待っていていいのかな」

アヤが不安そうに言う。

ボクたちの不安がマックスに達しようとしたとき、再び扉が開いた。

お寺の人が出てきて言う。

「ご住職さまにご相談申し上げました処、”殿方が離れでもよろしければ、お泊りください”とのことです」

ボクたちに異論があるはずもなかった。

野宿をすれば、どんな危険な動物に遭遇するかもわからない。

本当に、狼がいるかもしれない。

狼はいなくても、熊?

猪?

蚊に刺されて、マラリアにかかるかもしれない。

想像が想像を呼ぶ。

とにかく、テンパっていた。

雨風が凌げるだけでも文句は言えない。

小さな扉をくぐって境内に入る。

するともう一人、お寺の人が出迎えてくれていた。

その人もまた、作務衣姿の女性だった。

「男の方は、こちらですので」

そう言うと、自分についてくるようボクは促された。

サキとアヤの方を見てみる。

彼女たちはホッとした表情を見せていた。

不安はなさそうだ。

比丘尼寺で男子禁制というからには、女性ばかりのはずだ。

「じゃ、明日」

そう言って二人とはそこで別れ、ボクはお寺の人に従った。

案内されたのは、お寺の本堂から距離を少しおいた離れだった。

古い木造の建物だ。

でも、贅沢は言えない。

本来は、男子禁制なのだ。

寧ろ手を合わせるべきだ。

お寺の人に続いて建物に足を踏み入れる。

すると予想に反し、中は掃除が行き届いていて、快適な畳の間だった。

床の間まである。

「今夜は私が身の回りのお世話をさせていただきます」

お寺の人が灯台に明かりを灯しながら言った。

「えっ?」

「連華と申します」

お寺の人は、そう言うとボクに頭を下げた。

ちょっと面食らってしまった。

旅館じゃないよな。

そう思いながら、改めてお寺の人の様子を窺った。

年は三十くらいか。

綺麗な人だ。

おっと、あまりジロジロ見ていては失礼だ。

だから、あまり視線を向けないようにした。

だが、ついつい見てしまう。

お寺の人らしく、細身だ。

でも、髪は剃っていなくて、坊主頭ではない。

長めの黒髪を綺麗に後ろで束ねていた。

「レンカさん?」

「はい」

「レンカさんは、その…」

「はい」

「尼さん、っていうか…」

「はい、まだ、行者の身ではございますが…」

そう言いながら押入れから布団を出して、寝床の用意を始めてくれた。

手際がいい。

布団にシーツを広げながら、彼女が尋ねる。

「お腹は空いておられませんか?」

そう言えば、道に迷ってから何も食べていない。

お菓子も非常用のチョコレートも食べつくしていた。

でも、厚かましいことは言えない。

「いえ、お構いなく…」

見栄を張ってそういった。

その瞬間、ボクのお腹は正直な声を上げた。

ぐぅぅ~。

それを耳にしたレンカさんは、クスリと笑うと言った。

「山寺ですので何もありませんが、お食事をお持ちしますね」

「…スミマセン…」

バツが悪かったが、空腹には勝てない。

レンカさんは直ぐにお膳を用意してくれた。

一汁三菜。

精進料理で、肉気は無い。

腹をすかしたボクは、直ぐにお膳に箸をつけた。

味はいい。

量は多くはなかったが、お腹を満たすには十分だった。

「あの、彼女たちは?」

「お嬢さま方も召し上がっておられますわ」

良かった。

サキたちも飢えずに済んでいるようだ。

「汗をお流しになられますよね?」

レンカさんに問われ、今度は強がらずに頷いた。

レンカさんが風呂場へと案内してくれた。

建物の雰囲気から、五右衛門風呂か何かか?

そう思って恐る恐る風呂場を覗く。

すると、またしても予想に反し、そこにはお寺に似つかわしくないユニットバスがあった。

見るともうお湯が張ってある。

「お着替えはこちらに置いておきますので」

脱衣所の棚を手のひらを上に向けて指し示すレンカさん。

彼女はそれだけいうと、脱衣所から出て行った。

こんな山奥で、お寺に出くわすなんて奇跡だ。

夜露は身体に毒だ。

そう思いながら、お湯に使っていると、浴室の外から声が聞こえた。

「失礼します」

レンカさんだ。

「はい」

返事をすると、浴室の扉が開き、レンカさんが顔を覗かせた。

「お背中をお流しします」

「えっ?」

戸惑っているうちにレンカさんは浴室に入ってきた。

そして、彼女の前の木製の小さな椅子に座るよう促された。

レンカさんは作務衣を着替え、長襦袢になっていた。

何だか色っぽい。

「どうぞ」

ボクの方から視線を逸らせて、彼女が言った。

戸惑いながらも従ってしまうボク。

彼女に背を向けて腰を下ろした

すると、レンカさんはタオルに石鹸を泡立て始めた。

後ろからボクの腕を取って擦り始める。

もう片方の腕。

そして背中。

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