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投稿:2017-03-02(木)12:18

ボクの初体験はかつて塾でお世話になった先生だった。

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勇人さん(20代)からの投稿

小◯生の頃、電車でひと駅離れたところにある塾に通っていた。

そこの塾は個別のレベルに合わせてプリントをもらい、自分で解いて、先生に採点してもらって帰るという塾だった。

だから、そこには小◯生だけでなく、中◯生の生徒たちも通っていた。

そこに通う生徒たちは、お互いに交流するでもなく、ただやってきては淡々とプリントをこなし、帰っていく。

言葉を交わす相手といえば、採点をしてくれる先生くらいのものだった。

先生は三人いて、親子だった。

頭の禿げた白髪交じりの男の先生と、その奥さんである女の先生、それに若い女性の先生だった。

ボクが通っていた頃、しょっちゅうお喋りをする中◯生のお姉さんたちがいて、時々先生にジロリと睨まれていた。

なっちゃんとワカちゃんとお互いに呼び合っていた。

それ以外の生徒は大人しく、いつも学習部屋は静かだった。

学習部屋といってもマンションの一室で、友達の家で勉強しているようなゆるい雰囲気だった。

当時のボクにとってのお姉さんという存在は、中◯生のなっちゃんたちだ。

だから、先生は性別に関係なくみんな一括りに大人だった。

先生たちはみんな、ボクにとっては父親や母親と同じ、ただの大人に過ぎなかった。

小学校を卒業するとともに、ボクは塾も卒業した。

続けてもよかったのだけれど、友達もいないので自然とそうなった。

それから大学に入るまで、塾のことを思い出すこともなかった。

一度だけ、中◯生になってから、電車の中でワカちゃんを見かけた。

塾で見かけたことのある、田中さんというお兄さんと一緒だった。

田中さんは、中◯生にして、すでに高◯生の問題を解いていた人だったから、ちょっと塾では有名だった。

でも、塾のことを思い出したのは、それっきりだった。

ほかの誰もがそうであったように、受験勉強に追われ、思い出す暇もなかった。

塾通いのおかげかどうかはわからないけれど、ボクは一応大学と名のつくところに合格した。

自分で勉強をする習慣だけは身についていたらしい。

大学に通うようになって、時間ができた。

勉強しかしてこなかったので、女の子と付き合うノウハウもなかった。

何度か合コンにも行ったけど、どうも話が合わなくて駄目だった。

ゲームの中の女の子を攻略するのは得意だったのだけれど。

そんなわけで、ボクは時間を持て余していた。

夏休みに入ったある日、することがないボクは、思いつきで塾のあったところへと足を向けた。

ぶらぶらと散歩をするように懐かしい街並みを歩いていた。

塾のあったマンションまで行ってみたが、そこにはもう塾の看板はなかった。

そうかと言って落胆するわけでもなく、ボクは何の感慨もないまま駅への道を戻っていった。

そのとき、一人の女性とすれ違った。

綺麗な人だった。年は、三十歳くらいだ。

「先生!」

すれ違ってから思わず声に出してしまった。

すると、その女性は歩みを止めてゆっくりと振り返った。

怪訝そうにボクの顔をマジマジと見つめる。

「勇人くん?」

先生はボクを覚えてくれていた。

こくりと頷くと、先生は目を細めて言った。

「大きくなったわねぇ」

久しぶりに会ったときの親戚のおばさんと同じ反応だ。

先生は、昔と比べほのかにふっくらして、おっぱいが少し大きくなった気がした。

そうは思ったが、子供のころはそんなことに気を留めていなかったので、気のせいかもしれなかった。

「お久しぶりです」

ボクは改めて挨拶をした。

「あれから何年になるかしら・・・」

「もう大学生なんで・・・、6年ですかね」

「そう・・・、立派になっちゃって・・・」

感慨深げに言うお姉さん先生が懐かしかった。

何故だか無性に昔話がしたくなったボクは、先生を喫茶店に誘った。

・・・懐かしくなってというのは、嘘かもしれない。

先生がきれいだったので、ついというのが本音のような気がする。

「先生こそ、どうしているんですか?」

コーヒーが運ばれてくるとボクは尋ねた。

「両親が新しい塾を始めて、そこのお手伝いをしているの」

「でも、もうマンションに塾は無かったような・・・」

「あぁ、あそこへ行ったの?」

ボクが頷くと先生は続けた。

「あそこはもともと自宅だから、狭いので今は駅前に場所を借りているの」

それで納得がいった。

「勇人くん、家は近所じゃなかったわよね?」

「はい、ひと駅向こうです」

「そう・・・、今日はどうして?」

「大学に行ってもヒマだし、何となく、ぶらぶら」

くすりと笑う先生は昔のままだった。

「カノジョはいないの?」

「いませんよ、そんなの」

「へぇ、案外みんな、見る目ないのね」

そんな風に言われてドキリとした。

それからはとりとめもない話をしたが、きれいな女の人を前にしてなんだかぎくしゃくした。

子供の頃は、大人という括りでしか先生を見ていなかったのに。

それが、今ボクの目の前にいるお姉さん先生は、一人の女性として存在していた。

年の差は今も昔も変わらないはずなのに、昔よりは身近な存在になったような気がした。

「あ、私、もういかないと」

腕時計を見て先生が言うと、ボクは伝票を持って立ち上がった。

「ここは私が出すわ」

先生はそう言ってくれたけど、ボクは少し見栄を張って言った。

「いいですよ。誘ったの、ボクだし」

すると先生は、再び目を細めると言った。

「そう、それじゃあ、ご馳走になるわ。でも、次は私に出させてね」

その言葉に、ボクはドキッとした。

「次もあるのかな」

家に帰ってからもボクは先生の言葉をひたすら反芻していた。

「いやいや、あれは社交辞令というヤツだ」

そんな風に自分の中で否定してみた。

そのくせ、そうではないかもしれないとも思ったりした。

夢想はどんどん膨らみ、ひとりで一喜一憂していた。

子供のころはなんとも思っていなかったのに、先生のことが急に気になりだした。

大人の目になって見てみると、先生はそれほどきれいな人だった。

ストレートのさらさらの長い髪に、顎のラインが細くて、スレンダーな体型はモデルさんのようだった。

清純な感じが昔のままで、気がつくと先生のことばかり考えるようになっていた。

一週間ほど経って、ボクは再び塾のある駅に降り立っていた。

会えるわけもないのに漫然と往来を眺め、先生の姿を探している自分がいた。

けれどもすぐに無駄だと知って、今度は塾を探すことを思いついた。

探してみると、駅前の塾というのは、意外とすぐに見つかった。

今度こそ先生に偶然会えないか、期待は高まった。

しかし偶然がそんなに続くわけも無い。

ボクは塾のあるビルの前を行ったり来たりしていた。

時折生徒と思しき子供たちが入っていく。

誰かが見たら、不審者と間違われても仕方がない。

不審者に違いはなかったけれど。

気がつくと、ボクは塾の入り口に立っていた。

入ろうかどうしようか迷っていると、扉に張り紙がしてあることに気がついた。

『塾講師、アルバイト募集』

張り紙にはそう書いてあった。

「これだ!」

ボクは張り紙を剥がして手に取ると、塾の入り口の扉を押した。

出てきたのは、お母さん先生だった。

懐かしい顔だった。

今見ると、お母さん先生は、お姉さん先生にそっくりだった。

きれいな目鼻立ちで細い身体つきは、ボクの母親とは大違いだった。

唇が薄いところも親子そっくりだ。

昔の塾の生徒ということで、講師のバイトはすぐに決まった。

すぐにシフトが組まれてボクはその日から予習をさせられた。

お姉さん先生と顔を合わせたとき、先生は少し驚いた風だった。

だが、何も言わなかった。

ボクはその日、先生の顔を見られただけで満足だった。

だが、夏休みの塾というのは結構忙しくて、先生と話をする機会なんてなかった。

塾の講師なんてやったことがなかったけれど、場数だけどんどん踏んでいって少しずつそれらしくなっていった。

経験値が貯まるというやつだ。

習うより慣れろとは、よく言ったものだ。

今度はボクが、子供たちから先生と呼ばれるようになっていた。

昔通っていた塾のシステムなので要領はわかっている。

振り返ってみれば、ボクは所謂、即戦力というやつだったのだろう。

二週間が過ぎたころ、お姉さん先生にご飯を食べて帰らないかと誘われた。

そのころ、ボクはお姉さん先生をみのり先生と呼ぶようになっていた。

ボク以外の先生は、姓がみんな同じだからだ。

「少し飲んで帰る?」

大人として認めてもらったようで嬉しかったが、遠慮した。

「まだ、未成年なんで・・・」

そう言うと、みのり先生はボクを焼肉屋に連れて行ってくれた。

「暑苦しいかしら?」

先生は店に入る前に訊いてきたが、ボクの口は既に焼肉モードになっていたので、慌てて首を横に振った。

七輪を挟んでボクたちは向かい合って座った。

「これとこれとこれを一人前ずつ」

学生にはかなり贅沢なお肉のクリーンアップを先生は注文してくれた。

注文の品はすぐに運ばれてきて、ボクたちは出てきたお肉を二人で網にのせた。

煙越しにみのり先生が訊いてきた。

「勇人くん、どうしてうちでバイトする気になったの?」

ボクは正直に言うべきか、取り繕うべきか迷った。

迷ったけど、先生には正直でありたいと思って答えた。

「本当は、先生に会いに行ったんです」

「どういうこと?」

「その・・・、塾に行けば、先生に会えるかなと思って・・・」

「勇人くん、随分ストレートなのね」

みのり先生は、前歯で下唇を軽くかむようにしてはにかんで見せた。

「でも、何て言って訪ねたらいいのかわからなくて・・・、見たら、バイトを募集してたので・・・」

「そうだったの・・・」

先生はくすりと笑うと、焼きあがった肉をボクの前の小皿に乗せた。

「焼けたわ」

先生は少し焦げた方の肉を箸で掴むと、それを自分の小皿にとって、新しい肉を網に乗せた。

「それで、どうして私に会いたかったの?」

ボクは返答に詰まった。

ここで、いきなり告白するのは不自然だ。

考えているうちに沈黙が流れた。

沈黙に耐えられなくなったボクは、咄嗟に言った。

「相談したいことがあったんですけど、解決してしまって・・・」

今度は先生が少し黙った。

「そう・・・、ほら、早く食べないとまた焦げるわよ」

焦げ付きそうなのは、ボクの胸のうちだった。

そう思ったが、何も言えなかった。

そもそも先生のことを子供のころから慕っていたわけではない。

ほんの気まぐれで懐かしい場所に足を向けたら、偶々再会したに過ぎない。

それなのに、どうしてこんなにみのり先生のことが気になるのか、自分でも消化できずにいた。

それからは、塾の仕事の話をして、焼肉をたらふくご馳走になった後、店を出た。

ボクは食事代を払う気満々だったのに、トイレから戻るとお会計は済んでいた。

「先生、払いますよ」

店を出たところでそう言ったが、先生はお金を受け取ってくれなかった。

「じゃあ、お茶でも飲んで帰りませんか。ボクが出しますから」

先生はクスリと笑うと小さく頷いて、いきなりボクの腕に自分の腕を絡めてきた。

ボクの身長はもう、先生より高くなっていた。

夏場なので半そでのシャツだった。

そんなところへ薄手のブラウスの先生のおっぱいがボクの二の腕の裏に当たっている。

そう思っただけでボクは鼻血が出そうだった。

けれども平気を装って、歩き出した。

歩きながらボクは尋ねた。

「先生、お気に入りの生徒って、いたんですか?」

どうしてそんな質問をしたのか自分でもわからなかった。

「そうねぇ、別にお気に入りではなかったけど、田中くんって子は印象的だったかな」

「あ、覚えています。勉強、できる人ですよね」

「そこが少し鼻につくところだったけど、悪い子じゃなかったわ」

「ボク、田中さんがワカちゃんって呼ばれていたお姉さんと一緒にいたのを見たことがあります」

「へぇ、いつごろ?」

「中学の頃ですから、もう何年も前ですけど」

「ワカちゃんといつも一緒にいたなっちゃんって覚えてる?」

「えぇ、きれいなお姉さんですよね」

「あら、勇人くんも言うじゃない」

思わずボクは目を伏せたが、次の言葉に驚いた。

「美人薄命っていうのかなぁ、あの子、亡くなったのよ」

自分と同年代の人が既にこの世を去っているなんて、何だか実感が湧かなかった。

ただ、何だかショックだった。

「あの子たちは、もともと三人組でね、もうひとり、ケイちゃんって子がいたの」

「K?」

「慶子のケイ」

「あぁ・・・」

「家が近所だったから、お葬式に行ったの」

ボクは頷いて見せるしかなかった。

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