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投稿:2018-07-07(土)23:39

漫画みたいなツンデレ?クーデレ?系美人とのお話

この体験談のシリーズ一覧
1:漫画みたいなツンデレ?クーデレ?系美人とのお話
2:漫画みたいなツンデレ?クーデレ?系美人とのお話 続

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名無しさんからの投稿

16の時だった。

いつもと同じように授業を受け、終われば日誌を書き、そのついでに他の男子達と遊び、入部したてのテニス部に向かう際にどう言い訳しようか。

そんな事ばかりやるクソガキだった俺は、女っ気など殆どなく、中◯時代も1度だけ出来た彼女とかなりヤってから倦怠期のようなものになり、半年程度で別れて、自分には恋愛は向いていないのかなーとたまにぼけーっとしながら思う程度だった。

大好きなGReeeeNの音楽を聴きながらレポートを書き、講習の課題も終わらせ、一応それなりに充実していると思っていたし、今も思っている。

そんな俺に、ちょっとアニメっぽい出来事が起きた。

ある5月の部活帰り、案の定遅れてテニスコートに行った為、部長にラケットの角で頭を叩かれ、結構頭がジンジンして頭を撫でていたのだが、突然ポツポツと雨が降り始めた。

『今日はそう言えば雨が降るって言ってたな』

そんな程度にしか思わず、カバンに入っている折り畳み傘を取り出し、安心して歩いていると、案の定土砂降りの雨になり、バス帰りとは言え、待ち時間があるので憂鬱な気分になっていた。

そしてバス停に着くと、まず目に付いたのは俺以外の生徒が豪雨の中ぼーっと突っ立っていた事だ。

俺はこの時びっくりしたね。女子生徒なのに、傘もささず雨に濡れているせいで、ただでさえシャツ1枚の中間服が透けて、中の白いシャツと、ピンク色のブラが微妙に見えていたから。

目の合わせづらい状況だが、このまま風邪を引くのは良くないと思ったし、カバンで1年生ってわかった(俺の代から変わった)ので、話しかける事にした

「風邪引くよ?」

そう言うと、女の子はこっちを一瞥した。

この時の俺の第一印象は、冷たそうな感じ。

なんと言ってもぱっちりたした二重のはずなのに、目が死んだ魚のようなところ。

髪は雨に濡れてぺちゃんこだからよくわからない。

ただただ気だるげな美人系と言う言葉が俺の中でぐるぐる回ってたね。

一瞥したきりそっぽを向いた女の子。

いらっとしながらも放っておけない俺の偽善が炸裂し、諦めずに話しかけた。

「風邪引くから近くのコンビニで待ってたら?当分バスは来ないよ」

今時スマホでバスの時刻表は見れたので(ちなみに誰得ですがこの頃はiPhone6使ってました)、大体内容は把握しているつもりだった。

すると今度はちゃんとこちらに向き直ると、おもむろに口を開いた

「わかってるんで結構です。ありがとうございます」

冷めきった表情でそう言うと、また他所を向き、完全に取り合う気は0といった感じだった。

こりゃダメだと俺は思い、俺はカバンから使ってなかった大きめのタオルを取り出すと、女の子の頭に乗せ、傘を手に握らせた。

「俺はそこのコンビニで待つからさ、まぁ後で返してよ」

俺はこの時同じバスに乗ると思ってたので、その時に返して貰えれば、と思っていた。

そして、雨に濡れるのは嫌いなので運動部の本気で歩道を約100m歩いた先にあるコンビニまでダッシュで向かった。

「ちょっ、私は――」

何か聞こえたと思ったが多分別人だろう。そう思って全速力で走り、なんとかコンビニの屋根で雨が当たらない部分まで行き、部活で使った汗臭いタオルを仕方なく使い頭を拭いていると、ふとちょっと離れたところから大きな声がした

「あんた何してんの?!」

聞いたことある声だなーとか思いつつ頭を拭いていると、思いっきりタオルを引っ剥がされた。

「何してんのって聞いてるんだけど」

鋭い目付きをしたさっきの女の子が、息を切らしながらこっちを見ていた。

「え?」

全く理解できない意味不明な怒りに対して疑問符が浮かぶばかりだった。

「え?じゃなくて、私はバス乗らないって言ったでしょ」

まさに鬼の様な形相で問い詰める様子は女の子なんて可愛らしいものではなかった。

兎にも角にもそう言われ、ふと思い出した。

「あ、なんか後ろで言ってたの君か。ごめん聞いてなかったわ」

そう言うと、女は今度は呆れた様な顔をしながら言った

「余計なお節介を書くのはまだ良いとしても、勘違いしないでくれないかな?」

ちょっぴり恥ずかしい気持ちになったが、そうなると今度は別の疑問が出てくる

「ならなんでバス停にいたの?」

そう言うと、女はこれまさにアニメとかでよくあるあからさまに図星つかれた時に出る「うっ…」を再現していた。

初めて見ましたわ。

「別に。ちょっと雨に当たりたかっただけですけど」

「何それ黄昏てるつもり?風邪ひくから他所でやれ」

そう言うと、女はむすっとした顔で言った。

「違いますけど。もう、何なのあんた」

「俺はただの部活帰りの生徒です」

ちょっとネタ交じりに言ったのだが、この女には逆効果らしい

「そう言うのいらないから。ほんともう何なのかなー…」

そんなやり取りしてるうちにいい加減バスが来る時間ということに気付いてしまった。

「あ、ごめん俺もうバス来るから!その傘とタオルはあげるから好きにしてねー」

そういってバス停の方へ全力疾走した。

背後からあの女が追いかけて来ると言うことはなく、土砂降りのままバス停に着き、1〜2分経ってバスが来たので、乗り込んで頭を拭いてそのまま帰った。

それから2日後くらいだっただろうか。

部活が終わり、部室という名の倉庫で着替え、テニスコートの体育倉庫の方まで行ってテニスボールを片付け、そのまま帰ろうとしていたのだけれども、その途中の、テニスコートの入り口で、先日の女が肩まで伸びた巻き髪をくるくるしながらスマホをいじっていた。

…俺が先日あげたはずの傘を持って。

「なんで俺がテニス部だってわかったん?」

近寄りながら声をかけると、気付いた女は顔だけこちらに向けると、口を開いた

「…別に。テニスラケット背負ってたからテニス部ってわかったし、男好きな友達にテニス部の写真見せてもらったら誰かわかっただけよ古川さん」

俺の名前までちゃっかり知られていた。

今の話を聞く限り、女はどうやら俺に傘を返すために友達に聞いたりしていたらしい。

「別に返さんでも良かったのに」

女はそう言う俺を無視しながらこっちに寄り、持っていた何だか地味な手提げと傘を俺に差し出した

「これ、ありがとう」

死んだ魚のような元気のない目で見つめて来る女にときめくわけ無く、淡々と手提げと傘を貰って、一言だけ言った。

「名前は?」

そう言うと、女はカバンからスマホのイヤホンを取り出しながら一言

「古宮」

とだけ言うと、カバンを閉じ、すたすたと校門の方へ歩いて行った。

その日の夜、風呂から上がり、課題を終え、ラインを返しながらふと思った。

あんまりにも態度があれだから気にしてなかったけど、実はあの女可愛い。

身長は俺より結構低いので、160前後といったところだろうか。

軽く巻かれた髪からはちょっとだーけ良い匂いがしていた気もしないことはない。

ただ、態度が悪いし何より目が完全に死んでいる。銀○魂というアニメの主人公を思い出す。まさにあれ。

そんな事を考えながら、いつも通り12時くらいに電気を消して寝た。

それから暫く音沙汰がなかったのだが、ある日、放課後部活に行こうとしていた時、廊下を例の女…古宮が何やらプリントの山を抱えて歩いていた。

いつものように死んだ魚の目で。

「…何してんの」

目の前に立ち塞がってやると、古宮は止まって一言

「邪魔」

そう言うと俺の脛をコツンと蹴った。

「いたっ…。せっかく手伝ってやろうかと思ったのに」

「余計なお世話。さっさと部活行けば」

そう言うと古宮は俺を避け、行ってしまった。

「…うざ」

文句を呟きながら部活へと向かった。

それからは夏休み前まで学校で会うことはあっても話すことは無かった。

そんなある日、俺のお爺ちゃんのお兄さんが亡くなり、大体1週間後くらいに葬式が開かれることになった。

その日は学校を休み、葬式に参加したのだが、本当に信じられなかったが、古宮も葬式に居たのだ。

謎すぎる。

それでさり気なく父親の弟のおっちゃんに

「ねぇ、あの子、誰?」

と聞くと、おっちゃんは、お?お?お?と要らない茶々を入れてきたので、睨み付けると教えてくれた。

「あの子は確か叔父さんの娘さんの子じゃなかったかな?お淑やかな美人さんって結構親戚の中じゃ有名だよ。優等生らしいし」

予想外すぎた。結構血縁関係も近いとは。

それから葬式が終わり帰る際、駐車場で古宮に話し掛けた。

「お前がまさか親戚とは思わなかった」

すると古宮は俺を一瞥してから、車を見ながら言った

「私は知ってた」

初耳だった。俺は見たことも聞いたこともなかったから。

「え?何で?」

「別に。知らなくてもいいでしょ」

そう言うと古宮は自分の車に乗り、律儀に鍵を閉めスマホをいじり始めた。

俺も自分の車に乗り、親が来たらそのまま帰った。

その後特に何かあるわけでもなく、夏休みに入り、俺は先輩達の大会を応援したりして寂しい夏が終わり、2学期が始まった。

しかし二学期も別に女の子ときゃっきゃうふふできる暇もなく、普通に部活に明け暮れて居た。

そんなある日のこと。

学校の図書室の奥の暗い部屋に、辞書を取りに行った時、ふと古宮がいたのがわかった。

話し掛けてやろうかなとか思っていたけど、古宮は本棚の前で何やら俯いていて、よく分からないけど話し掛けづらい雰囲気を醸し出していた。

だが、そうなると何だか余計に気になって、後ろから、肩にポンと手を置いた。

すると、古宮の肩がビクビクっと跳ねて、すぐにこっちを向いた。

こっちを見た古宮は、頰と鼻を朱に染め、目をウルウル、というか涙を溜めていたので泣いていると言うのが一眼にわかった。

古宮は古宮で、手を置いたのが俺とわかった途端、結構パニクって、俯いて顔を隠していた。

パニクってる時はそれなりに可愛かった。

が、そんな事言える雰囲気では無く、俺はちょっとおろおろしながら

「どうしたん?大丈夫か?」

そう言うが、古宮というと

「もう…なんで来るかな…やめてよほんと…」

とぶつぶつ早口でつぶやいていた。

そこにいつもの冷静さは無く、ちょっと心配になったので、俺は古宮の両肩を掴んで軽く揺らした

「おーい、大丈夫か〜」

そう言うと、古宮はキッとこっちを睨みつけて言った。

「もう大丈夫だから早くどっか行って」

涙目と鼻声で言われてもと言った感じだったので

「取り敢えず落ち着けって。何かあったのか?」

そう言うと、古宮はしばらく黙って俯いていたが、ポツポツと話し始めた

「お爺ちゃん、病弱で入院しがちで、友達もあんまりいなかった私のお見舞いに毎日来てくれて、本読んでくれたり、ゲームを持って来てくれたり…。亡くなったって聞いた時もちょっとだけ泣いたけど、もう立ち直った気でいたの。でも、今見つけたこの本を見たら、またちょっとうるって来て…」

そう言って本棚から取り出した本は、とある小説だった。

ただのミステリーだったのだが、古宮はこれが初めて読んだ小説で、お爺ちゃんから貰い、その後はお爺ちゃんに返したらしいが、大切な本らしい。

俺は不謹慎だがちょっと可愛いと思ってしまった。

結局、古宮が少し落ち着くまで近くの椅子に座り一緒に居たのだが、ふとずっと俯いて居た古宮が

「…帰る」

と言って立ち上がった。

要らないと言われそうだが、何だか今の古宮は弱々しい気がしたので、付いていく事にした。

そして帰り道。古宮の隣で歩いて居たが、終始無言だった。

ただ、唯一会話と言えない事もないのは、

「家は?」

「…近く」

「そっか」

それきり、会話はしてない。

古宮がある家の前で止まり、こっちを向いた。

「ここだから。ありがとう」

そう言って小さく手を振りながら、かなり大きい高層マンションの中に入っていった。

別に使命感があったというわけでは無かったが、何故かやりきった感があったのは覚えてる。

それから俺は家路についた。

その日の夜、いつもの様にYouTubeを見ていると、ふとラインを開くと、

“あや”という名前のアカウントに何故か追加され、ラインが来ていた。

誰だろうか、と思いトークを開くと、その文面から一瞬で誰が送って来たか分かった。

「こんばんは。今日はありがとう。友達がラインを教えてくれたから仕方なく追加しといた。よろしく」

こんな冷たい文章は、古宮としか思えない。

俺はすぐにラインを送り返した。

「別に今日の事は気にしてないけど、その上から目線をどうにかしてくれ」

送信すると、2〜3分で返信がきた。

「そんな事言われても性格だから仕方ない」

自覚ありで直す気0なのはある意味尊敬する。

結局その日だけで100通以上のやり取りをして、ふとラインの返信が途絶えたので、そのまま寝た。

そして次の日、起きてすぐにラインを開くと、古宮からラインが来ていた。

「ごめんなさい。いつのまにか寝てたの」

古宮みたいなしっかりした人でも寝落ちするんだなと何故か感心していた俺がいた。

それから、少しずつ古宮との距離が縮まった気がする。学校でも、古宮がクラスに来て教科書を貸せと頼まれ、貸してからというもの、たまに貸したり、貸してもらったり、ふとラインでお互いの家の出る時間と学校の到着時間を聞いてから、どちらともなく合流出来るようにお互いに時間調整したりと、微妙な距離感の関係だった。

そんなある日。部活の途中、テニスコートの側にある芝生の坂に古宮が座ってこっちを眺めていた。

相変わらず目は死んでいるが、つまらない、と言った顔では無かった。

実はこの頃になると、古宮の微妙な表情の変化などを読み取れるようになり、面白くないとか面白いとか、怒っているとかわかるようになって来たのだ。

そのまま練習が終わったあと、膝の上に肘をついて顎を乗せてぼけーっとしていた古宮の後ろに回り込み、氷水に浸けていたアクエリアスをうなじに着けると、古宮の肩がビクビクっと跳ね上がり

「ひゃっ!!」

となんか可愛い声をあげた。

古宮はすぐに後ろを向いてこっちを睨みつけていたが、俺はゲラゲラ笑いながらアクエリアスを手渡した。

「…ありがとう」

そう言って少しアクエリアスを飲むと、俺に返して来た。

俺もそれをグビグビ飲んでいたが、特別間接キスとかは気にしなかった。

そして、アクエリアスのキャップを閉じ、古宮の方を見ると、また膝に肘をついて顎を乗せながら遠くの方をぬぼーっと見ていた。

「どうしたん」

古宮の横にあぐらをかいて座り、アクエリアスを一気に飲み干した。

「別に…ただ、部活っていいなって」

ちょっとだけ羨ましそうな眼差しをテニスコートに向ける古宮は、何となく女の子っぽかった。

「それなら、部活入ればいいんじゃねーの」

そう言うと、古宮は首を横に振った。

「私気管支喘息で、中々運動とか許してもらえないの。それに、今更入るのも気が引けるし」

そう言って寂しそうな顔をする古宮に、俺は一つの提案をした。

「マネージャーなら運動する訳でもないからやり易いんじゃないのか」

ぶっちゃけ古宮が部活に入って白い肌が損なわれるのは俺的にはアウトだが、まぁ別に本人がやりたいならそれが良いと思った。

「それに、今マネージャー足りてない部活多いし、重宝されると思うぞ」

そう言うと、古宮は相変わらずの体勢でうーんと考え込んでから言った

「まぁ、それなら頑張れるかも。でも部活やるってなったら日焼け止めとかシーブリーズとか色々買わないといけないよね」

やっぱりそういうところは気にするのだろう。腐っても女の子だ。

「まぁ、やる気あるならテニス部のマネージャーにでもなってくれよ。取り敢えず帰ろうぜ」

そう言って立ち上がると、古宮もよいしょと言いながら立ち上がり、お尻に着いた草を叩いていた。

「…ありがとうね」

不意に古宮が言ったその言葉を聞き、その声の方を向くと、少しだけ頰を朱色に染めながら恥ずかしげにしていた古宮を見て、少しだけ照れくさかった。

でも、結局その日の帰りもバカにされたりしながらいつも通りだった。

そして時は進み10月の第四土曜。

体育祭の日。

うちの高校の体育祭は特別何かあるわけではないが、俺は200mと、800mリレーの一番手として出ることになっていた。

「綾は何に出るんだっけ」

この頃になると、お互い名前で呼び合っていたが、特別な想いとかはなかった。

「別に。ダンス以外は自由参加だから私はダンスだけ。琉唯は?」

「俺は200と800リレーだな」

そんなやりとりをしながら、お互い体操服姿で登校していた。

うちの高校の体操服は、結構金がかかる代わりに体操服や制服はお洒落だ。

体操服も、女用に至っては胸が強調され易いので、この時も綾のまぁまぁある胸が微妙に俺の視線を彷徨わせていた。

俺は最近はバス登校をやめ、歩きで綾の家の側のJR駅で待ち合わせというのが普通になって来ている。

元々バス使わなくても学校までは30分とかからないから、そんなに気にはならなかった。

まぁでも実際会話をそんなに交わすかと言えばそうでもなく、無言の時間の方が多い。

この日も結局それ以来会話は無く、無言のまま学校に到着していた。

「じゃ、俺はそのままクラスのとこ行くから」

グラウンドには既にクラスごとに生徒が集まっていた。

「私は放送の方行くから。」

綾は相変わらず冷めた態度で放送テントの方へといってしまった。

綾は放送の係りになって、機材とかを運んだりしてるらしい。

そしてそれきり綾と話すことは無いまま体育祭はスタートした。

俺が出る種目は、学年全体の組体操と個人種目で200m、リレー種目で800mリレー…まぁ俗に言う8継に出るのだが、最初の方の200m以外は、後半の種目なのでぶっちゃけその間は暇になるだろう。

そして、3種目として、はやくも200m走が回って来た。

俺は入場の際も男友達と談笑しながら入り、自分の順番を待っていた。

「次!」

女の体育の先生がそう呼ばれたときに、やっと自分の番かといった感じに俺は自分のライン前に立った。

俺は1番内側なので、後ろの方からスタートだった。

先生が銃の引き金を引き、バン!と銃声が鳴ると同時に、俺を含めた4人が一斉の走り出した。

俺と同じレースを走っているのは、俺と同じテニス部の1人と、残り2人は知らん。

けど、足は速く、スタートダッシュしてちょっとの時点では俺は3位とかなり悪かった。

が、そこはテニス部の底力。

毎日毎日狭いコートを反復横跳びの用に動き回って鍛えた脚力は伊達じゃない。

むしろ体育祭の競技全ては俺のフィールドではないだろうか。

全力で走り、2位と差を詰め、追い越すと、そのまま1位を独走していたもう1人の1番外を走っていたテニス部のメンバーに詰め寄っていった。

もう少しで追いつけそうな状況が続いたが、ラストコーナでもギリギリ追い付けず、最終的な結果としては2位と無念の結果になった。テニス部同士の戦いは負けたが、まぁ2位なのでそれなりの仕事はしただろう。

結局俺のクラスのブロックは、200m走が終わった時点で2/4位とまぁまぁな状態だった。

ちなみにうちの高校はクラスがかなり多いので、1学年の中で、2クラスのペアを4つ作っている。

これまた偶然なことに、綾のクラスと同じブロックになって、少しだけ俺は喜んでた。

応援席に戻ると真っ先に男子に労いと言う名の茶々を入れられ、女子からも軽くからかわれた。

そして、席に着いてからお茶を飲み、そこから暫くの談笑が続いた。

それから暫くすると、組体操が始まり、それが終わると女子のダンスを挟んで、800mリレーの順番が回って来た。

「よっしゃ。行ってくるか」

そう言ってほかの参加する男子3名と入場門の前に向かう途中、応援席に戻ろうとしていた綾と目が合った。

綾は口だけを動かし、

「がんばれ」

と伝えて来たので、

「おう」

と口を動かすと、綾は少し満足そうに戻っていった。

それからすぐ入場し、1年生の800mリレーがスタートしようとしていた。

俺は1番手で、またもや1番内側…コーナー側となっていた。

「位置について!」

その声を聞き、クラウチングスタートの構えを取る。

「よーい!」

腰を浮かせ、完全にスタートの準備をして

バン!!!

その銃声と共に、俺は一気に地面を蹴った。

スタートダッシュはまぁ案の定コーナー側なので4位だが、最初のコーナーで何人抜けるかが1番大事だ。

最初のコーナーで3位だった200m走は、完全に相手が速かったのと、俺がちょっとしたミスをしたからなのだが、さすがに同じミスはしない。

コーナーに入ると、身体を完全に左に傾け、手を大きく振りながらスピードを落とさず走ると、一気に2位まで上り詰めた。

だが、1位は俺の一つ横だったはずの見知らぬ男で、俺の前に位置どり、効率良くコーナーを回り、首位を独走している。

卑怯だろ…。とか思いつつも、とにかく次に繋げないとという意識が強かった。

でも、この1位の男の次の走者は確か陸上部なので、ここで譲れないというものもあり、コーナーをこいつに譲って2位で安定させるか、一か八か、上手くいくかもわからないけど、こいつの前に回り込んで時間稼ぎをするか。頭の中でグルグルと二択が回っていた時、自分の応援席の方から、クラスメイト達の応援の声がして、そっちを見ると、綾が見えた。

口元に両手を当て、一生懸命応援してるのを見て、ちょっとやる気が出た気がした。

とにかく1位で繋げたい。そう思い、俺は第2レーンに移ると、そのままスタミナ無視、力の限りのスピードで1位の前に回り込んだ。

2位に落ちた男は、俺と同じような事をしようとしたが、もうその時には既にラストコーナーを回っており、ここを第2レーンで通っても、差が開くだけとわかったのか、2位で我慢してくれた。

俺は何とか1位としてバトンを2人目の野球部に手渡した。

「ないすぅ!!!」

野球部の男が言ったその言葉は今でも明確に憶えている。

俺はグラウンドの真ん中の待機組のところに座ると、残りのメンバーの応援を頑張った。

野球部の男は、俺なんかよりよっぽど早く、陸上部の男とタメを張っていた。

陸上部の男も頑張っていたようだが、差は縮まらず、俺の時と殆ど同じ差で3人目…最速の帰宅部って今でも呼ばれてる男に繋がれた。

最速の帰宅部は、文字通り最速で、2位とガンガン差をつけていった。

そしてアンカーは、うちのクラスの陸上部にして中学陸上で地区ブロックで1位を取り、全国まで行った特待生だ。

勿論そんじょそこらの人間のスピードではなく、あっという間に1位ゴールを決めた。

800mはうちのブロックが1位を決め、俺の役目は終わった。最後にブロック対抗リレーという学年、男女混合、200m×6人で、この体育祭は幕を閉じる。

1年のうちのブロックからは、先の陸上特待生と、足を怪我していてこれしか出れないという主人公的ポジションのサッカー部だった。

まぁ結局このリレーは2位で終わったのだが、総合成績では、学級旗などの成績も合わせ、1位となり、体育祭は幕を下ろした。

その日の夕方、俺は綾と2人でマックでのんびりしていた。

「琉唯汗臭い」

鼻をつまみながら死んだ魚のような目でこっちを見る綾を見ると、今日はご機嫌な気がした。

「そんなこと言うなって。俺頑張ったんだから」

そう言いながらマックシェイクを飲み干した。

「まぁ、800mリレーに出れるなんて凄いんじゃない?」

珍しく褒めてくれる綾に驚きつつも、胸を張っていってやった。

「まぁ、俺運動神経良いから」

「でも頭は悪い」

成績の良い綾から見たら、1学期末平均80点越えの俺ですら雑魚なのだろう。

「まぁ、とにかく体育祭は終わったし、もう今年は何もないな」

文化祭は結構早くに終わるので、もう来年まで無い。

「そうね。」

綾は詰まらなそうに机に頬杖をつくと、窓の外を見た。

「私も思いっきり運動とかしてみたいな」

確か綾はリモデリングという喘息の症状?が出ているせいで、喘息の治療が困難らしい。

とはいえ、運動で起きる喘息はそこまで酷く無いらしいので、綾の親がそこまで全力の運動を止める理由は、今でもぶっちゃけわからない。

「出来るだろ」

なんて言えば良いのかわからなかった。

「だと良いけど」

ちょっと哀しそうな顔をする綾にかける言葉がない俺は、一生懸命考えて、思い付いた事を1つ言った。

「今度、カラオケでも行くか」

「は?なんで?」

何言ってんのこいつみたいな顔をされたが、俺は引かなかった

「運動は出来なくても、それなりに楽しめれば良いっていうのを知ってほしかったから?」

途中から何を言っているのかわからなくなったが、まぁそういう事だ。

「はぁ…。別に私は構わないけど、琉唯は部活あるんじゃないの?」

「そんなの1日サボるくらい問題ない」

2台目鬼部長が脳裏を過ぎったが、大丈夫だろう。…大丈夫ですよね?

「…なんでそんなに気を使ってくれるの」

綾がこっちをみながら言った。

俺は言葉が詰まった。言われて見ると、何で俺はこんなにこいつに気を使ってるんだろうって。

そんな俺に構わず、綾は続けた

「初めて会った時からそうだけど、琉唯はなにかと私に気を使ってくれる。どうして?」

少し顔を赤らめ尋ねる綾は、いつもと違う気がした。

「別に、気にかかるからだよ。」

何とか言葉を思い浮かばせ、そう言うと、綾は少しだけ落胆したような表情を見せてから言った

「そう。…ありがとう」

「あぁ…うん」

「カラオケの事に関しては、また予定を考えるから」

そう言うと綾は立ち上がり、自分の飲んだ物を片付けに行った。

そして、俺もついて行く様に、自分のトレイを片手に立ち上がった。

結局その日、綾とあれ以降会話はほとんど交わしていない。

翌日からはいつも通りだったが、何だかモヤモヤした気持ちが俺の中にあった。

そして、それからお互いに何か変わった事はなく、年末や正月を一緒に過ごすことも無く進み、2年生になった。

クラス替えの紙が生徒玄関に貼ってあり、俺と綾は登校してすぐにそれをみた。

1枚の用紙に、五十音順で名前と、クラスが書いてある形になるのだが、綾は古宮なのでカ行、俺は古川なのでハ行を見ていた。

「綾、何組だった?」

「私は2-E」

「お、奇遇だな。俺も2-Eだ」

偶々だが、綾と同じクラスになり、少し嬉しい俺がいた。

新クラスに俺の知ってる顔は殆ど居なくて、担任も元1-Aと俺と綾、どちらも接点が無い感じだった。

これを機に、俺と綾はかなりの確率で休み時間を共に過ごす事になった。

授業はお互い真面目に受ける人なので特に何もなかったが、休み時間は教室で談笑していた。

そんなある日、後ろから声がかけられた。

「お前、あの古宮とか言う女子と仲良いよな」

後ろを振り返ると、よく知らない生徒2名が俺の方を見ていた。

「あぁ…まぁ去年からの付き合いだからじゃ無いかな」

男2人の最初のイメージは、失礼だが陰キャと言った感じだった。

「へぇ〜、あんな可愛い子とお近付きになれるなんてラッキーだね」

「それなwwwなんか羨ましいわ〜w」

2人とも同調しておだてるが、別に何か意に介する程ではない。

「そうでも無いよ」

軽く流そうと適当な返事をするが、2人は全く聞く耳を持たず

「勿論2人は付き合ってるんだよね?w」

と聞いてきた。

「いや、付き合ってないけど」

素直な事実を伝えると、2人は驚いたような顔をして

「えぇぇぇぇ?!!ww」

「あんな可愛い子、告白して付き合っちゃいなよww」

と捲し立ててくる。

よく分からんけどなんか胡散臭い感じがしたので

「ごめんちょっとトイレ」

そう言って教室を抜け出した。

それからトイレに行って戻って来て、綾の席の側まで行くと、綾がこっちを見ながら言った

「なんか変なのに絡まれてたけど、大丈夫?」

どうやらさっきの一連のやりとり、聞かれていたらしい。

「あぁ、大丈夫大丈夫。気にすんな」

そう言うと綾は呟いた。

「まぁ、私としては――――」

「ん?今なんて?」

なんて言っているのかわからなかったが、そう言うと綾はえ?っとした顔をした後、急に慌てて手を振りだした

「違う違う!そう言うことじゃ無い!」

何言ってんだこいつとか思いながら「わかったわかった」と諌めると、授業の予鈴が鳴り始め、席に着いた。

そして、それから特に何も無く文化祭シーズンがやってきた。

うちのクラスは、ベターすぎるがメイド喫茶をやる事になり、綾もメイド服を着るらしい。この頃になると理解していたが、このクラスは結構オタ系が多い。女子も顔のスペックは良くても暗めで押しの弱そうな子とかばかりで、メイド喫茶も嫌々やる事になった。

メイド服はなんか知らんが色んなサイズのやつを持ってる奴がいて、そいつが持って来る事になった。

メイド喫茶の準備が着々と進む中、俺は内心綾のメイド服姿がちょっと気になっていた。

そして、文化祭当日2日前、例の男がメイド服を持ってきて、試着する事になった。

最初の方に来た女子皆んなメイド服が似合っていて、俺はちょっとニヤつきそうになった。そして最後に綾が入って来たが、メイド服姿を見て、やばかった。

頭に白いフリルカチューシャと、結構お胸が強調されるちょっとだけセクシーなメイド服だった。

ただ、何より気になったのはガーターベルトだったのは言うまでも無い。

とにかく似合ってて、目を奪われた。

まぁ、死んだ魚の目は健在でしたけどね。

お披露目の後、綾は俺の方まですたすたと歩いて来ると、胸を張りながら言った

「ちょっと胸の強調が激しい気がする」

「わかったから余計に強調すんな」

綾はくすくすと笑いながら言った

「似合ってる?」

一回転して見せると、フリルのスカートがひらひらとははためき、細くて白い太ももがギリギリまで見えてなんかエロかった。

「似合ってる」

それしか言葉が出てこなかったが、その言葉を聞くと、綾は満足そうに頷き

「そう。ならよかった」

と他の女子の方へと行ってしまった。

俺はちょっと照れくさい気持ちになりながら、他の男子の作業を手伝った。

文化祭当日。

初日は非公開なので、自由に回れる。俺は午前中綾と一緒に入り、午後は綾と店を回る予定だった。

そして午前。ベターだし他のクラスもやると思っていたメイド喫茶は、なんと校内じゃうちだけで、かなりの反響があった。

一応商品に関しては、最初に受付で何を買うか決め、それを家庭調理室から持って来ると言う風なシステムだ。俺は料理を作る係りの1人だが、料理はそこまで得意では無く、俺はシンプルで簡単なオムライスのチキンライスの部分を作る係りだった。

メイド喫茶の反響は尋常じゃなく、午後も回れそうにない程の人が出入りしていた。終いには教師まで入る程で、俺たち2-Eの文化祭は、2日間ともに一切の休みが無かった。

結局出店を回る約束をしていたはずの綾とも殆ど会話を交わさないままで、文化祭が終わって片付けの時、やっと会話が出来た。

「お疲れ。どうだった?大変だったみたいだけど」

そう声を掛けると、綾はいつもより死んだ魚感をアップした目で言った

「大変なんてもんじゃ無かった。死ぬかと思った」

何となく事の凄惨さがわかった気がした。

「それに、いらっしゃいませ♪ご主人様♪なんて2度と言いたくない…」

いらっしゃいませ♪ご主人様♪だけえらく本気で言ったせいか、少しどきっとした。

「大変だったんだな…」

右手を綾の肩に乗せて言うと、綾は無言でうなずいた。

結局それから、何事も無く過ぎていった。

夏休みに入るが、俺は部活に明け暮れ、実は去年の10月ぐらいの一件の後から毎回見に来ていた綾はいつのまにか先輩のマネージャーの手伝いをしたりして、入部もしてないのにマネージャー扱いになっていた。

何だかんだで3年の先輩は人数が少ないので、俺とあと2人がレギュラー入りし、大会に出たが、結局は県大会のベスト4に入り、その上の、名称は言えないが、その大会まで行ったが、そこで敗退した。

先輩が引退し、部長は俺とは違う奴になり、俺は残りの夏くらい満喫しようと綾と遊びに行くことにした。

そして8月の下旬のある日。俺は綾の花火大会に行く事になり、ちょっとだけアレの枚数を増やして財布に入れた。

そして、待ち合わせのJR駅に行くと、多くの人が浴衣姿で出入りしており、かなり混雑していた。

俺は綾を探し回っていたのだが、ふいに後ろから肩をちょんちょんと触られた。

振り向くと、そこには浴衣を着た、凄まじいほど可愛い綾がいた。

「ずっと後ろに居たんだけれど。」

相変わらず死んだ魚の様な目でそう言われ現実に引き戻される。

「そうか、悪かった。取り敢えず行こう」

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