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投稿:2017-08-11(金)23:32

小学校の同級生と再会した一晩を32000字で書いてみた。

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川瀬くんさん(20代)からの投稿

6月終わりの日曜日、俺は学生時代ぶりに試験を受けに行った。

大学卒業後就職した会社を一年で辞め、未来への当て所なくアルバイトを始めては辞め、また始めては辞める生活を続けていたものの、先日26歳の誕生日を迎えたとき、その"20代後半"という年月の重みと自分の中身の軽さに否応ない焦りを覚えたことをきっかけに、アルバイト先の先輩に勧められるまま検定試験を受けに行ったのだ。

その試験とは色彩検定なる試験だった。

それは現在、駅ビル内のアパレルショップでアルバイトをしている日常の中、とりあえず何でもいいから挑戦したいという思いの俺にとっては打って付けの検定で、久しぶりの受験生活に一喜一憂しながら一ヶ月間なんとか勉強を続け、ついに受験日を迎えたのだった。

試験の出来は上々だった。

だから「やめ」という試験管の声を聞いた時、長らく忘れていた達成感と充実感に満ち溢れ、快い溜息をついた。

松島さんとの再会はそんな時だった。

試験管から退出許可が出て、筆箱を閉める音や問題用紙をバッグに入れる音、ささやかな話し声や座席を立つ音に辺りが騒めきだした頃、うんと背伸びをして筆箱をバッグに入れた俺は、うっかり受験票を床に落としてしまった。

受験票の行方を追って視線を落とすと、それを拾ってくれた人の細い指が斜め後ろから目の前に突き出された。

ありがとうございます、と口ごもりながら視線を上げると、その途中で視線が止まった。

肌の白さが映えるコーラルピンクのワンピースのふんわりとしたシフォン素材をギチギチと押し上げる大きな二つのふくらみが、かがんだ胸元からはみ出している。

うわっ、デカっ、と思うと同時に「えっ」とその人の声が降って来たので、己を恥じて顔を上げた。

すると目を丸くした美人の女と目が合った。

その女は俺の顔と受験票を交互に眺め、そして笑顔になって俺の名を呼んだ。

「えっ!うそっ!川瀬くん?」

ーーー

松島さんは小学校の同級生だった。

と言っても取り分け仲の良い間柄だったわけではなく、ただ単純に同学年の女子たちの一人で、それは松島さんにとっても同じだったと思う。

しかしそんな間柄で、いや、そんな希薄な間柄だったからこそ俺は彼女に対する一つの強烈な印象を持っていた。

それは、俺にとって松島さんは、"初めて生のおっぱいを見た女の子"だったことである。

小◯生の頃の松島さんは本当に地味な女子だった。

クラスのリーダー的グループなど雲の上の存在のようにして、わりと控えめなグループにいたにも関わらず、それでもそのグループ内で下っ端の扱いを受けていた松島さんは、いつもゴワゴワの髪の毛にヨレヨレのTシャツを着て、お洒落のカケラもないメガネの下の口元には、いつも濃い産毛を生やしていた。

それは、流れる雨が窓を濡らす今ぐらいの時期だったか。

高い湿度が背中に貼り付く気持ち悪さに、やっぱり半袖を着て来て良かった、などと思っていた小学6年生のある日、何かの小テストを受けていた時だった。

さっさと全問解き終えてしまった俺は静かな教室内でやることもなく手遊びをしていたら、ポロリと消しゴムを落としてしまった。

消しゴムの行方を追って視線を落とすと、それを拾ってくれた人の丸々とした指が斜め後ろから目の前に突き出された。

ありがとう、と口からすぐに出ないまま視線を上げると、その途中で視線が止まった。

肌の白さが映える色褪せたピンクのTシャツのヨレヨレの胸元から、盛り塩のような小高いふくらみと薄茶色の先端がこぼれていたのだ。

えっ、俺の胸と全然形が違う、と思うと同時に変にドキッとした気持ちを覚えている。

「ねぇ」とヒソヒソ声が降って来て顔を上げると、ダサい眼鏡の奥の瞳と目が合った。

すると先程とは違う温度でドキッとしたので、松島さんの手から消しゴムを引ったくって何事もなかったように机に向かったのだったと思う。

それからしばらくは、お礼の言葉もなく消しゴムを引ったくった罪悪感と、もう一度松島さんの胸を見てみたいけどそれは何だか良くないことのような気がする、というジレンマが混じり合って、松島さんを避けたり、ちょっかいをかけたり、変に優しくしてみたりしていた時期があった。

けれどそれも俺が中学受験で別の中学に行ってからは、過去の記憶となった。

思春期でまともに中学の女子と喋ることができなかった俺は、松島さんの記憶を引っ張り出しては夜な夜なティッシュに劣情を吐き出して、罪悪感を深めた。

しかしそれも高校に上がって部活に恋に勉強にそれなりに忙しくなってからは、まったく思い出すこともなくなっていった。

ーーー

「えー。でもそんないいところに就職してたなら、やっぱちょっともったいないね」

「うるさいな。辞めて後悔はしてないから、まじで」

午後6時過ぎ。

松島さんと俺は繁華街のバルのテラスで初めてお酒を酌み交わしていた。

試験会場で再会を果たしたあと何となく近所のカフェでお茶をすることになった俺たちは、募る話が意外と盛り上がり、気付けばお腹の空く時間になっていたので、俺が唯一知っている繁華街のお洒落なお店に誘って夕食をとる事にしたのだ。

俺にとっては久しぶりの女子との食事だった。

新卒で入った会社をすぐに辞めてしまって以来、俺は自分への劣等感でどんどん内にこもる生活を送っていたので、久しぶりの女子との食事は本当に楽しい時間だった。

それは今思えば、永らく誰とも話さなかったフラストレーションが試験終了の充実感によって解放され、少しだけ自分を赦せる心が生まれたからかもしれない。

「そっか。それならいっか。結構アパレルも楽しいもんでしょ?」

初夏の遅い夕暮れをバックに2杯目のサングリアを飲み干した松島さんに、俺はタパスを突きながら「そうやなぁ」と応えた。

松島さんはこれまで、アパレル一本で生きてきた女だった。

高校卒業後なんとなくデパートのショップ店員としてアルバイトを始め、なんとなくそのまま就職したものの、26歳になることを機にデザインの社内コンペに参加することを決め、そのために今回の検定を受けたとのことだった。

「じゃあ松島さんはこれからデザイナーになるんだ?」

「そうやね。なりたいと思ってる」

テーブルに届いた3杯目のサングリアを煽った松島さんは言葉を続けた。

「けど正直、今からじゃ遅いスタートよね。ウチのデザイナーの人たちって専門学校で勉強してすぐにデザイナーになった人たちばっかりやもん」

はあ、と溜息をついた松島さんにパエリアを取り分けてあげると、松島さんは「ありがと」と言ってパクパク食べた。

「けど松島さんなら大丈夫やろ」

「なんでよ」

「だってなんか、お洒落になったし」

酔いに任せて思ったままのことを言うと、松島さんは俺を見つめるなり、鼻息だけで小さく笑って言った。

「そうやね。わたし、昔いつもヨレヨレの服ばっかり着てたもんね」

「いや、そういうこと言ってんじゃなくて」

わざとらしく自嘲的に笑った松島さんに、続けて素直な気持ちを言った。

「綺麗になった、って言ってんの!」

俺は何を言ってるんだ、と内心恥ずかしくなると同時にテラスの前を行き交う雑踏が大きく耳に聞こえた。

しかし俺がそう言ってから松島さんは何も喋らなくなってしまったので、俺はその雑踏を聞いているしかなかった。

ほどなくしてテーブルのサングリアにちょこっと口をつけた松島さんは呟くように言った。

「何言ってんの、急に」

「いや。ごめん。大声出して」

「うん」

「けど、言ったことは本当だから」

「…」

松島さんは再び喋らなくなってしまった。

なので俺はそのまま自分の気持ちの間違いない部分だけを言った。

「だから、その、まあ、応援してるよ、ってことだから」

俺がビールに口をつけると松島さんは口を開いた。

「なにそれ。なんで"綺麗になった"が"応援してるよ"になるわけ?」

「知らんわ。けどそう思ったんやからしょうがないやん」

取り繕うために口につけたビールを一気に煽ると、また鼻息で小さく笑った松島さんは笑顔を見せて言った。

「ありがとね」

その笑顔はやっぱり綺麗だったが、その表情はどこか見覚えのある可愛さで、俺は不意にドキッとした。

すると何も喋られなくなってしまった俺は雑踏に目を向けて、空いたビールに口をつけた。

どうして俺はこの笑顔に見覚えがあるんだろう。

ただのクラスメイトだった松島さんが、かつて俺にこんな笑顔を向けてくれた覚えなんてないはずなのに。

しばらくすると松島さんはポーチを持って「ちょっとトイレ行ってくる」と言って、テーブルから去って行った。

そして少しして戻って来ると、何だかクッキリした目鼻立ちになっていた松島さんが快活な子供みたいに目をキラキラさせて聞いてきた。

「ねえ」

「ん?」

「川瀬くん、このあとどうすると?」

「え?んー…特になんもない」

「そっか。わたしも」

「うん」

「…」

「…」

「…川瀬くん、明日は?」

「明日は遅番…だから余裕ある。松島さんは?」

「わたしは普通に朝から出勤!…だけど、まあ、何てことないけど」

「そっか」

「うん」

「…」

「…」

三たび訪れた沈黙と空気はここ数年忘れかけていた感情を思い起こした。

胸の奥で高鳴る鼓動がどんどん耳に近付いて来ると同時に血液が降りて一点に集まっていく。

俺は言った。

「あのさ」

「うん?」

高鳴る鼓動に自分の声が聞こえなくなる前に俺は言った。

「どっかで飲み直す?」

「どこで?」

「どこでもいいけど…」

「…」

「…いや違うな」

「うん?」

「俺ん家。俺ん家で飲み直そう」

「…」

「…イヤ?」

ふふん、と鼻息で笑った松島さんはうつむいて、サングリアにちょこっと口をつけて言った。

「いいよ」

そんな松島さんの笑顔を見た俺は、ああ、良い歳して勉強して良かったなあ、もっとがんばろう、と心の底から思った。

ーーー

いつもなら電車で帰るが、早く二人きりになりたかったので奮発してタクシーで帰った。

申し訳なさそうな顔をしながら何だか嬉しそうな松島さんの表情を見ながらタクシーを降り、コンビニに寄ってマンションに到着した頃にはすっかり夜の帳が下りていた。

「お邪魔しまーす」と言って玄関で靴を脱ぐ松島さんを室内に促し、電気とテレビをつけてコンビニの袋をテーブルに置いて、ソファの左にドサリと腰を下ろした。

すると松島さんがどこに座ろうか迷っている様子だったのでポンポンとソファを叩くと、松島さんは拳一個分の距離を開けて俺の右隣に座った。

そして松島さんがあまりにもキョロキョロと辺りを見回すので俺は少し苦笑しながらコンビニの袋から缶チューハイを出して言った。

「あんまりジロジロ見ないでよ」

「ごめん」

缶チューハイを手渡された松島さんはふふっと笑って目を伏せた。

「連れて来るのに何か問題あった?」

「いや、なんか、綺麗にしてるんだね。本当は彼女とかいるんじゃないの?」

自分の缶チューハイを開けた俺はソファにもたれて素直に悲しい現状を応えた。

「残念ながらしばらくおらんよ。松島さんこそ本当は彼氏いるんじゃないの?」

「わたし?わたしもまあ、そりゃ、いないよ」

変に含みのある言い方だったが深くは考えないことにして、ひとまず缶チューハイを掲げて言った。

「そっか。じゃあ、お互い恋人のいない者同士、再会を祝して、乾杯!」

「ふふっ、乾杯」

缶を突き合わせて一口飲んだが、すぐにそれをテーブルに置いてテレビを眺めて沈黙した。

そして松島さんも同じく一口飲んだだけでそれをすぐにテーブルに置いてテレビを眺めて沈黙した。

お互いそんなことはわかっていた。本当に飲み直すためだけにこの部屋に来たわけではない。

静かな室内をテレビの喧しさが埋めた。

ちらほらと二人に会話はあったが、そのどれもが内容のないもので、それが一層これから起こり得る二人の期待をありありと示しているかのようだった。

すでに法律など関係ない法律相談番組がCMに切り替わった頃、俺と松島さんの間のソファに松島さんの左手が置かれていることに気が付いた。

なので俺は何気ない風を装って、その手のひらを右手で握った。

すると意外にも松島さんの手のひらは手汗でじっとり濡れていた。

瞬時に手を離した松島さんはゴシゴシと手のひらをコーラルピンクのワンピースで拭いて呟いた。

「ごめん、手汗」

「いや、それくらい別にいいけど」

俺も一応チノパンで手のひらを拭いて再びソファに置くと、松島さんもそっと手のひらを重ねてくれた。

うつむいた松島さんは言った。

「ここでこんなこと言うのも何だけどさ。その…ほんとに、久しぶりなんだ。こういうの」

「そうなんだ」と言って手のひらを握ると、松島さんは小さく笑ってその手を握り返した。

「緊張してるの?」

俺が問うと松島さんはうつむいたままコクリとうなずいた。

間違いなく俺も緊張していた。なにせ会社を辞めてバイト生活を始めて以来、ずっとこういう機会から遠ざかっていたから。

けれど松島さんの緊張があまりにも手のひらから伝わるので、その対比で俺の緊張は薄まっている気がした。

「じゃあさ」

俺が言うと松島さんはうつむいた顔をこちらに向けて次の言葉を待った。

「ゆっくりしようよ」

俺は手のひらの力をやんわりと抜いて、言葉を続けた。

「俺も緊張してるし」

ふふっと笑った松島さんはわざと問い質すような声色で「本当に?」と続け、俺が左手で松島さんの頭に触れると、やんわりとその頭を俺の右肩に預けてくれた。

俺は髪の香りに緊張を解かしながら、綺麗に染められた髪の頭をゆっくりゆっくりと撫でた。

ーーー

電気の消えた室内で、消音されたテレビの灯りだけがくちびるを重ねる二人の輪郭を照らしていた。

くちびるの先を触れ合わせてから一体どれくらいの時間が経っただろう。

聞こえるのはどちらのものともわからない吐息と、どちらのものでもある水音だけで、香るのはサングリアの果実味と松島さんの匂いだけである。

口内から伝わる久しぶりの甘やかさに脳が包まれた俺は、もっともっとその甘さに脳を浸すべく何度も何度も松島さんの中を確かめた。

すると最初は俺の舌に応えようとしていただけの松島さんの舌も次第に俺の中により深く入って来ようと動き始め、それがさらに心地良くて、俺はもっともっと松島さんの中に没入していった。

小刻みに身体を震わせていた松島さんが不意に「ねえ」と言って俺の身体を離したので、俺は荒い息を吐きながら同じく呼吸を荒げた松島さんの言葉を待った。

すると松島さんはうつむいて言った。

「ちょ、ちょっとさあ」

呼吸を整えることを努めるように松島さんは続けた。

「な、なんか、は、激し過ぎるよ」

甘さに浸された脳味噌は何のことだかわからなかったが、俺はそのまま聞いた。

「…イヤ、だった?」

とろりとした瞳で松島さんを見つめると、同じくとろりとした瞳を返した松島さんは言った。

「いや、その、イヤじゃ、ないけど、なんか、わたし」

"イヤじゃない"と聞いて脳がゴーサインを出したので俺が再び松島さんの中に入っていくと、松島さんは再び小刻みに震え始め、その口端から露骨な喘ぎ声が飛び出るや否や「待って!待って!」と吐息に乗せて再び俺の身体を離した。

意味不明な気持ちを吐息に込めて「なんだよ」と問うと、松島さんはとろりとした瞳で困ったような眉毛の形で言った。

「ごめん、なんか、変だ、今日、わたし」

荒い呼吸に唾を飲み下して松島さんは続けた。

「いつもは、こんなんじゃ、ないんだけど、なんか、なんか…」

要領を得ない物言いに困惑した俺は、沈黙して松島さんの言いたいことを考えた。

とろけた頭はまるで正常に働かなかったが、松島さんが「なんか、わたし、もう…その…その…」と続け、ワンピースから伸びた太ももギュッと締める動作を見て、脳内に考えが一つ浮かんだ。

なので、まさかとは思いながらも俺は口を開いた。

「なに、その…イきそうなの?」

そう問うなり松島さんはくちびるをギュッと締めて、荒い呼吸の中でうなずいた。

俺は驚きながらも、ずっと繋がれたままの手のひらを強く握り返して言葉を続けた。

「でもまだ、イけないの?」

うつむいた松島さんは小さくうなずいた。

とろけた脳内に少しだけ冷静さを取り戻しながら俺は続けた。

「イきたいの?」

聞くなり松島さんの手のひらがギュッと握られた。

けれど口には決して出さない松島さんの恥じらいに途方も無い愛しさを感じた俺は、松島さんの身体を背中から抱きしめるように俺の身体にもたれさせ、右手は繋いだまま左手で松島さんのワンピースの裾をめくった。

するとギュッと締められた真っ白な太ももの根元に三角の黒の布地が現れた。

「裾、持ってて。濡れちゃうから」

素直に裾を持った松島さんが、さり気なく俺を見上げたので俺は聞いた。

「この体勢でイけそう?さっきの方がいい?」

「…これがいい」

「そっか」と言って早速ひざから太ももの隙間に指を這わせると、いきなり熱い吐息が頬にかかったので俺はそのおでこにくちづけながら指を布地に落とした。

狭い布地越しに指先を上下させながら俺が「どっちが好き?」と耳元で尋ねると、松島さんは呼吸の中で「…外」と呟いたので布地の手前を念入りに引っかいた。

すると平面の布地上で一箇所、吐息が大きくなる点を見つけた。

なのでそこをこちょこちょと引っかいていると、松島さんの吐息が徐々に明らかな喘ぎに変わっていった。

右手で俺の右手を、左手で真面目に裾を掴んで悶える松島さんに俺は静かに聞いた。

「このままがいい?もっと?」

まぶたを閉じて無防備に喘ぐ松島さんは、吐息の中で応えた。

「こ…このまま…。…つよいのは…イヤ…」

「わかった」と応えてそのまま布地越しにそこをこちょこちょしていると、とろけた顔面を抗うようにゆがめた松島さんの喘ぎ声が、うなされるように低く深くなっていった。

なので俺が"イきそう?"と聞こうと松島さんの左耳にくちびるを寄せると、瞬時、松島さんの口から「う」と音が飛び出して、俺を掴む右手を握りしめ、硬直した腰が低く持ち上がった。

そして叫ぶように口を開けるも、そこから声は続かず、喉元でつかえたような空気が「あ、あ…」のような音になって漏れた。

ほどなくすると、大きく息を吐いた松島さんの腰はドサリとソファに落ち、それから短く不規則な呼吸を始めてぐったりと俺の身体に全身がもたれた。

正直、俺は、その何もかもに驚いていた。

かつて付き合ってエッチをした女の子たちにイってもらった自負はあったが、ここまで明らかにイったであろう姿を見たことはなかった。

思えばかつての女の子たちからは、わかりやすく喘いで少し身震いしたあと、言葉にて"イっちゃった…"と報告されるばかりだった。

そう考えればもしかして今までの女の子たちがイったというのは本当は…。

なんだか冷たいものが心にポトリと落ちた気がした俺は、再び指先で布地を引っかいた。

すると「ぁあ!」と大声を出して起き上がった松島さんは俺の左手を振り払い、再びバタリと俺の身体に倒れ込んだ。

そして「ちょっと、ちょっと待って」と懸命な様子で伝えたので俺は素直に待っておくことにした。

呼吸が規則的に整ってきた松島さんは、ふー、と大きな息を吐くと、取り繕うようにムクリと起き上がり、片手をソファについてぐったりとした身体を支え、少しの間だけ何でもないところを見つめたのちに、俺の目をチラリと見て微笑して言った。

「ビックリした」

"俺もビックリした"と言いかけたが、何だか言葉が出なかったのでそのまま松島さんの横顔を見つめていると、松島さんは小さく言葉を続けた。

「いつもこんなことしてんの?」

「…え。なにが?」

「ふんっ、"なにが?"って」

「…」

「…」

「…」

「…わたし、生まれて初めて、マジでイったかもしんない」

「え?」

「いや、こんなこと言うのも恥ずいけど。26年も生きててこんなこと言うのも恥ずいんだけど」

「…」

目をパチパチさせて天井を見上げた松島さんが指先で目尻を拭ったので、反射的に背中をさすってあげようと俺が手を伸ばすと、ワンピースの背中に触れるや否や松島さんはビクリと跳ねてその手から距離を取って、言った。

「なに!」

「いや、背中さすろうかと思って」

「なんでよ!」

「いや、"なんでよ"って」

「…」

「…優しさ?」

「はあ?」と言った松島さんは、俺が渡したティッシュを受け取って目元を押さえたのち俺を見つめて言った。

「なんか怖いんやけど」

「…」

「…」

「…え。もう、したくなくなった、とかじゃないよね?」

「えー、するとー?」

不服そうにおどけた松島さんにつられて俺は言った。

「え、するやろ!ここまで来たら!」

「えー、入れるとー?」

「え、入れるやろ!ここまで来たら!」

「えー、変態ー」

もちろん言葉にした気持ちも本心だったが、正直このまま松島さんと戯れているだけでも悪くない心地だった。

ーーー

ティッシュで鼻をグズグズやっている松島さんを眺めていると何だか喉が渇いてきたので、俺はソファから立ち上がって冷蔵庫から取り出した2リットルのミネラルウォーターに口をつけ、ふう、と息を吐いた。

せっかく久しぶりに女の子を家に連れ込んだというのに、自分がやけに穏やかな溜息をついたことに小さく笑ってしまうと、背後から「どうしたと?」と松島さんが聞いてきたので「なんでもない」と応えて振り返り、言葉を続けた。

「水、飲む?」

「あ、うん。ちょーだい」

言われるままにペットボトルを手渡そうとしたけれど、両手を広げて笑顔で俺を見上げる松島さんの可愛さに愛しさを感じた俺は「口開けて」と松島さんに言って、自らの口内いっぱいにミネラルウォーターを含みソファに座る松島さんに覆いかぶさった。

松島さんは「え?え?まじ?え?」と戸惑いながらも、そのくちびるに俺がくちづけるとコクリコクリと喉を鳴らして冷たいミネラルウォーターを飲み干してくれた。

くちびるを離して松島さんの顔を見つめていると、それに気付いた松島さんは短く息をついてサッと目を逸らして言った。

「…やっぱ変態」

「どこがだよ。イヤだった?」

「いや別にイヤとかじゃないけど」

ムスッとして目を合わせてくれない松島さんにきびすを返してペットボトルを冷蔵庫にしまい戻って来ると、鎖骨の辺りを手で拭っていた松島さんは俺を見るなりムスッとした顔を作り直して目を逸らした。

俺は言った。

「あ。ごめん。服、濡れちゃったね」

「別にいいけど、それくらい」

俺がソファに腰を下ろしてからも、松島さんはずっとムスッとしてそっぽを向いたままだった。

なので俺は松島さんの右手を引っ張って、ソファの上で俺の正面に女の子座りさせてから言った。

「じゃあ…」

「んー?」

「…」

「…」

「脱ぐか、服」

「やだ」

「なんでだよ!」

ムスッとした顔をほころばせて松島さんは言った。

「だって川瀬くんエロいことするもん」

「さっきからエロいことしてんじゃん!」

「そうやけど…」

「そうやろ?」

「やっぱやだ」

「なんでだよ!」

ニコニコしながら拒否してくる松島さんの突然の大人げなさに、変に不貞腐れた気持ちになって黙っていると、まるで自分がイイ女であるかのような声色で「しょうがないなあ」と言った松島さんが後ろ手にワンピースのチャックを開けようとした。

なので俺はその手を退けて両手でチャックに手をかけた。

ふふん、と笑う松島さんの顔が目の前にあった。

チャックを下げると松島さんの顔が少し上がったので、俺はそのくちびるにちょんとくちづけた。

すると再びふふん、と笑った松島さんはお返しするように俺のくちびるにちょんとくちづけてくれた。

チャックを下ろして両手で松島さんの肩に手をかけると、松島さんはピクンと微動するも袖からゆっくりと片腕ずつ抜いていった。

バサリと布地が落ちた音がしたので眼下を見やると、視界いっぱいの真っ白なふくらみが黒布に寄せられて谷間を深めていた。

「でかっ」

思わず乱雑な言葉が口から飛び出ると、松島さんは苦笑いをして口を開いた。

「そんなでかくないよ」

迷わず下着のホックに両手を伸ばすと、松島さんは笑いながらも外しやすいように背中を反ってくれた。

けれどパサリと黒布が落ちると、細い両腕がサッとそのふくらみを覆い隠してしまった。

「どうしたの」

「んん、なんだろ、その」

なおも小さく笑いながら松島さんは言葉を続けた。

「やっぱ、なんか、恥ずかしいね。小学校の同級生に見られるのって」

"なんだよー。昔、俺はすでに一回見てるよー。いまさら気にするなよー"などと言ってしまいそうになったが当然、脳内で警報が鳴ったので「そうだよね」と言って誤魔化した。

しかしこちらからアクションをしなければ一向に両腕は開かぬ気配を見せたので、俺は腕にやんわりと触れて言った。

「ね」

「ん?」

「見せて」

「…」

松島さんは何も言わなかったが、その腕は俺の手に導かれるままそろりそろりと開かれた。

するとそこには、記憶とはまるで違う、大人の女の乳房があった。

鎖骨からなだらかに下りて腋から急にふくらみを増すそのたわみは、胴体の中央から腋の下まで圧倒的な質量の拡がりをもって、見るからに重たそうに鎮座している。

不安になるほどに脇腹はえぐれ、それはヘソの下をやんわりと覆う脂肪がパンツのゴムにさり気なく乗っていることに安心するほどである。

そして記憶の中では、盛り塩のような小高いふくらみの先の焦茶色だったはずの頂点は、ふくらみの大きさのためにその面積を増し、明るい薄茶色になっていた。

そして目の前に広がるそれらのすべてが、今まで見たものの中で一番綺麗だと思った。

しばし呆然とその身体に魅せられていると細い左腕がそれを隠そうとしたので、ハッとして顔を上げると笑った口元に探るような瞳で俺を見つめる松島さんと目が合った。

松島さんはいじけるようにして言った。

「ごめんね、垂れてて」

「いや…これだけ大きかったら垂れるやろ。…てかこんなん垂れてるウチに入らんやろ」

「ははは、ありがとーフォロー」

「てか本当に…」

俺は、肌に這わせる視線を隠さずに呟いた。

「…めっちゃ綺麗」

肩に鎖骨にお腹に胸に、その胸を隠す腕の細さにまで魅せられて再び呆然とした。

するとそろりそろりとその細腕が下りていって、その仕草が自分にもっと心を開いてくれたように感じられて、思わず右手で二の腕に触れると、松島さんはさり気なく短い吐息を漏らした。

松島さんの身体にもっと触れたくなった俺は、その身体をソファの背にもたれさせ、松島さんの左肩の細さを自分の胸に感じながら、右手を回して右肩を抱きしめた。

再び松島さんの顔が目の前に来たので、俺は迷わずそのくちびるにキスをした。

するといきなり松島さんの鼻から甘い嬌声が抜け、俺の舌先に松島さんの舌先が絡みついてきた。

再び口内から伝わる刺激に脳味噌を浸した俺は、まぶたを閉じてその甘さに没頭しながらも、当たり前のように松島さんの肌の上を這う指先から伝わる感触を確かめていた。

しっとりと貼りつくような太ももの柔らかさからジットリと湿っている熱さを感じる布地、もちもちとした下腹に触れた時には腹筋に込められる恥じらいの意思を感じたのでそこは早めに切り上げて、ゆっくりと脇腹から背中に指を這わすとしっとりとかいた汗に触れた。

けれどそれ以上に気が付いたことは、背中を這っている時の松島さんの吐息が一段と大きくなったことだった。

なので背中を重点的に探っていると、松島さんは背中というより骨盤の裏辺りがどうやら好きなようだったので、その辺りを念入りに確かめた。

すると、くちびるを離した甘い声が「ねーえ?」と俺を呼んだ。

「なーに?」

「また触ってー?」

「…どこを?」

「さっきんとこ」

震える甘い吐息を鼻に感じながら俺は重ねて聞いた。

「さっきんとこって、どこ?」

すると意思表示するようにくちびるを結んだ松島さんは、鼻から荒く息を吐きながら俺が気付くのを待った。

そのまま知らんぷりをして隠語を言わせる方向にしてみようかとも思ったが、俺はあまりそっちに食指が向かないので俺は言葉を続けた。

「またイきたくなっちゃったと?」

そう聞くと松島さんは困ったように小さく「うん」と応えた。

「松島さんはすぐイっちゃう子なんやねー」

そう言うと松島さんはくちびるを結んで「んーん」と顔を横に振ったので、どこがだよ、という気持ちを込めて俺は再び布地の上を指先で引っかき始めた。

すると割とすぐに。

さっきより控えめに。

松島さんはイってしまったので何だか物足りない心地がした俺は、松島さんの張り詰められた力が抜けるたび何度も何度も念入りに、お願いされた箇所を引っかいては引っかき続けた。

"念入りに"と書いたが、今考えると普通に"執拗に"だったと思う。

けれど、俺の腕の中で何度も何度も慎ましく絶頂に迎える松島さんの横顔を見ていると、俺は否応ない愛しさを感じて、やはり何度も何度も松島さんの身体に触れ続けた。

ーーー

午前0時過ぎ。

背中に規則的な寝息を聞きながら、ソファにもたれて興味のないサッカーのハイライトを眺めていると、名前だけは聞いたことのある選手がドリブルからのスーパーシュートを決めて大歓声が起こった瞬間、大きな鼻息を吸い込んだ背後の女が起き上がる衣摺れが聞こえた。

顔だけで振り向くと、そこにはタオルケットに包まれた松島さんが眠そうな瞳をパチパチさせている姿があった。

苦笑しながら俺は言った。

「起きた?」

「…んー。…ごめん。寝てた?」

「うん」

先ほど何度も何度も念入りに松島さんの身体に触れていたら、何度も何度も身体を硬直させては脱力することを繰り返した松島さんは、気付けば喘ぐこともなく痙攣するだけになっていたので、それが落ち着くのしばらく待っていると、松島さんはスヤスヤと寝息を立てて眠ってしまったのだ。

松島さんは呟いた。

「…ごめん」

「ふん、いいよ別に」

「…どれくらい寝てた?」

「んー、一時間くらい?」

「そっか」

「うん」

番組が次のコーナーに変わった頃、松島さんは再び呟いた。

「…ごめん」

「ふふん、だからいいって。…もう寝る?」

ぼんやりとした瞳で松島さんがブンブンと首を横に振ったので俺は笑いながら言った。

「いやいや、眠そうやん」

「んー」

しばらくの沈黙のあと、松島さんは「とりあえずトイレ!」と宣言してタオルケットを抱きしめて部屋から去って行った。俺はパンツの黒布が食い込んだ松島さんの真っ白なおしりの大きさをしかと目に焼き付けた。

部屋に戻って来た松島さんは無理やり頭を起こした表情で「ただいま」と言ってソファに腰掛けた。

「おかえり」

「んー」

「…水とか飲む?」

「んー…飲む」

立ち上がった俺は冷蔵庫からペットボトルを取り出しながら話しかけた。

「酔いが覚めてビックリ、って感じ?」

「んふふ、そんなことないよ。別にそんなに酔ってたわけじゃないし」

「それは良かったわ。起きていきなり『そんなはずじゃなかったのに!』とか言われたら俺ちょっとヘコむもん」

「んふふ」

手渡されたペットボトルをコクリコクリと飲んだ松島さんは少しぼーっとしたあと再び、んふふ、と笑ったので俺は聞いた。

「どうしたん」

「んふふ、いや、なんか」

「うん?」

「そういえば、さっきは口移しでお水飲んだなぁと思って」

松島さんは何でもないところを眺めながらペットボトルの飲み口を拭った。

「あ、ごめん。また口移しが良かった?」

「ふふふ。はあ?そんなんじゃないし」

「そうなん」

「うん」

その返答に何気ない寂しさを感じた俺は、ズカズカと松島さんに歩み寄ってドサリとソファに座って言った。

「俺も、水」

「ん」と言って松島さんがペットボトルを差し出したので俺は続けて言った。

「そうやなくて。口で」

「はあ?」と笑った松島さんが「やだ」と続けたので、俺は「ん」と言って口を開いて松島さんを見つめた。

しばらく笑って誤魔化していた松島さんだったが、それも続かなくなると大きく鼻から息を吐いて「わかったよ」と呟きペットボトルに口をつけた。

けれど松島さんはそれからどういう動作をすればいいかわからない様子だったので、俺はソファの肘置きに頭を乗せ、そこに松島さんが上から覆い被さるように促した。

するとソファに乗って俺の頭の両側に両肘をついた松島さんのタオルケットははだけ、鎖骨の奥に現れた大きな胸のふくらみが揺れるさまが見えた瞬間、俺のくちびるは塞がれた。

松島さんのくちびるから注がれるミネラルウォーターは、とても甘くて冷たかった。

頬を伝う冷たさをもったいなく感じながら、コクリコクリと喉を鳴らしているだけで股間が勃起していった。

けれど心はとても穏やかで、永遠に松島さんから水を飲ませて欲しいと願った。

長い吐息を俺の口内に満たした松島さんは言った。

「これでいい?」

「いや、もっと」

俺がそう呟くと、松島さんは少し笑って俺の中をゆっくりゆっくりと舌で潤してくれた。

しばし甘美な時間に包まれた。

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