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平凡なボクの人生に割り込んできたのは、金髪の女子◯生だった

山田さん(20代)からの投稿
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ボクが慶子を初めて見かけたのは、朝の通学列車でだった。

夏休み前だというのに、既に気温は夏真っ盛りという水準に達していて、それでいて、その列車の冷房は効きがすこぶる悪かった。

乗客がみんなイライラし始めている中で、周囲の迷惑も考えずに、声のボリューム調節に配慮のない女子◯生のキンキン声が、背後から聞こえてきた。

アイドルの話だとか、何のテレビ番組を見たとかを話しているうちはまだ良かったが、先生はみんな馬鹿だとか、アイツは空気が読めないとかいう話を無神経にを大声で話し始めると、一気に不快指数が上がった。

"自分たち以外のことはみんなKYだとか言っているくせに、何だよ"

その電車に乗り合わせていた乗客の半分くらいは、ボクと同じことを考えていたのではないかと思うが、それを口に出して言う勇気のある者はいなかった。

ところが居たんだな、勇気のある男前なヤツが。

「少しは周りの空気を読んで、静かにしなよ」

思わず振り返ると、髪を金髪に染めた女子◯生二人と、如何にもお嬢さま風で黒髪の女子◯生二人が睨み合っていた。

"へぇ、お嬢さまなのに、言うなぁ"

そう思って成り行きを見守っていると、次に口を開いたのは、何とお嬢さま風の方のひとりだった。

「余計なお世話よ」

そう言われても、金髪が動じることはなく、更にパンチを繰り出した。

「ついでに言わせてもらうけれど、大声でそんな風に程度の低い話ばかりしていると、私らより馬鹿に見られるよ」

隣でセコンド役のもう一人の金髪が、頷くのが見えた。

一触即発の緊急事態発生で、殴り合いでも始まるのではないかとヒヤヒヤした。

そのとき電車が次の駅のホームに停まり、お嬢さま風の二人は小声で悪態を吐くと、人ごみを掻き分けるようにして、罰の悪そうな表情のまま電車を降りていった。

列車の中にいた何人かから小さな拍手がパチパチと沸き起こったが、更に乗り込んできた乗客の波に押され、金髪の女子◯生二人は、車両の奥へと流されていった。

ほんの些細な朝のラッシュ時の出来事に、偶然居合わせただけのことだった。

それなのに、その日から、ボクはどうしてだかその金髪の女子◯生のことが妙に気になって仕方がなかった。

気が付いたら毎日、その子のことを目で追うようになっていた。

毎朝、ボクと同じ時刻に同じ電車の同じ車両に乗ってくるので、学校をサボっている様子はなかった。

よく見ると、女の子は二人とも綺麗な顔立ちをしていて、見た目は少し不良っぽかったけれど、お洒落に制服を着こなしていた。

ボクは、いつも後ろから三両目の一番前の扉から列車に乗り込む。

金髪の二人は、ボクが乗車してからいくつか後の駅で、同じ扉から乗り込んで来ることもあれば、ひとつかふたつ、後ろに乗り込んでくることもあった。

電車の中でその子たちを見かけると、悟られないように、いつもそっと見守っていた。

同じ扉に乗り合わせたときは、携帯電話をいじっているふりをして、全身を耳にしてボクは二人の会話を聞いていた。

お嬢さま風の女子◯生とは違って、声のボリュームをちゃんと落として話しているので、あまり聞こえなかったけれど、そのうちに、一緒にいる女の子の方は、ワカちゃんと呼ばれていることがわかった。

ところがある日、いつもの電車に揺られて、その子が乗り込んでくる駅のホームに到着すると、珍しくワカちゃんの姿がなかった。

人の波に押されて、気になっている方の女の子がひとりで乗り込んでくると、ボクはその女の子が人の波に押しつぶされないように後ろに立って、勝手に防波堤になった気分でいた。

カーブに差し掛かった列車が大きく揺れて、女の子の身体がくるりと反転し、偶然にもボクとちょうど向かい合わせになった。

少し膨らんだ彼女の胸がボクの胸に押し付けられ、神さまの悪戯に感謝した。

ちょうどボクの鼻の下に、金髪の女子◯生の頭があって、とてもいい匂いがしていた。

ところがそのとき、ボクと女の子の間の腰の辺りで、誰かの手がもぞもぞと不審な動きをするのを感じた。

女の子が顔を上げてボクをキッと睨んできたので、ボクは周りの人への迷惑も考えず、慌てて両手を頭上に翳して万歳をしてみせた。

ボクの仕草がおかしかったのか、"ボクじゃ、ありませんよ"と必死に訴えているボクの表情がおかしかったのか、金髪の女の子はいきなり吹き出すように小さく笑った。

顎を下げた女の子の額がボクの鎖骨の辺りに押し付けられて、気がつくと、ボクらの間で不審な動きをしていた手はどこかに消えていた。

女の子の顔に険しい表情はもう残っていなくて、ボクたちは電車に揺られ続けた。

女子◯生の金髪が、ボクの鼻先でいつまでもいい香りを放ち、なんだかとても幸せな気分だった。

よく考えてみたら、その女の子のことが気になりだしてから、半年以上が経っていた。

ボクはその子を日課のように見守るのが楽しみで、結果として、学校にはきちんと通うことになっていたので、何とか落第せずに進級することができた。

春休みの間は、彼女を見ることができなくて、何だか物足りない毎日だった。

休みが終わって、久々に電車に乗ると、いつもの駅で、女の子姿を探した。

けれども、その日、金髪の女子◯生の姿は何処にも見当たらなかった。

"電車を変えたのかな"

そう思って回りをキョロキョロ見渡したが、女の子の姿はどこにもなかった。

新学期を迎え、高まっていたテンションが一気に下がった。

電車が乗換駅についてからも、キョロキョロと人の波に視線を漂わせて無意識に金髪を探していたが、やはり彼女の姿はどこにもなかった。

気落ちして歩いていると、駅の階段を登りきったところで、誰かにポンと肩を叩かれた。

「誰を探しているの?」

振り返ると、あの女子◯生が悪戯っぽい表情を顔に浮かべて立っていた。

ボクのテンションは、一気にマックスレベルに回復した。

けれども、女の子の髪はもう見慣れた金色ではなくて、真っ黒に染め直されていた。

着崩した制服も幾分まともになっていて、普通の女子◯生になっていた。

「その髪、どうしたの?」

一方的に視線を注いでいただけの相手なのに、話しかけられて、思わず知り合いのように話かけてしまった。

女の子はニッと笑ってボクの腕を取ると、駅構内の喫茶店にボクを連れ込んだ。

二人分のモーニングを勝手に注文してから、女子◯生はまっすぐにボクの目を見て言った。

「私のこと、探してたでしょ?」

ストレート、ど真ん中の質問をされて、ボクは取り繕う暇もなく、思わず頷いてしまった。

「私、ケイっていうの。お兄さんは?」

「K?」

「慶子のケイ」

「ああ・・・、ボクは、山田」

「下の名前は?」

「太郎」

「山田太郎?」

ボクが頷くと、慶子は目を少し細めて疑いの眼差しをボクに向けた。

「ねぇ、私のこと、警戒してる?」

いつものことだ。

ボクは、この名前のせいで、"書き方の見本みたいな名前だ"と言われることが、毎度のことだった。

「本当の名前だよ」

ボクは学生証を取り出して、慶子の前に差し出した。

「へぇ、お兄さん、頭いいんだ。何年生?」

慶子は、学生証に書かれた大学名を見ながら聞いてきた。

「二年だけど。ケイ・・・ちゃんは?」

「ケイでいいよ。私は、高三。なったばかりだけど」

慶子は、すぐに運ばれてきたモーニングのゆで卵の殻を剥きながら言った。

1時限目の講義の時間が少し気になったけれど、慶子と話せる機会を逃したくなくて、ボクはそのまま喫茶店に居続けた。

「学校はいいの?」

ボクが尋ねると、慶子は悪戯っぽく笑っていった。

「サボったことないから、大丈夫」

「そうなの?」

「うん、それに・・・、今日はお兄さんに会いに来たんだもん」

ボクは、一瞬唖然としたが、この展開はどうみても、"告白される・・・"と思った。

けれども、ボクはそういうシチュには慣れていない。

慣れていないどころか、高校は男子校だったので、それまでに女の子との接点なんかほとんどなくて、何だか舞い上がってしまった。

「あの、ボクはこういうの慣れてないから確認なんだけど、もしかして、ボク、ナンパされてる?」

女の子は一瞬キョトンとした顔をしてみせたが、次の瞬間、ギャハハと笑い始めた。

「やだ、お兄さんったら、そんな訳ないじゃん」

ボクは自分の耳まで赤くなっているのを感じ、火が出そうなほど顔が熱くなった。

すると慶子は、真顔に戻って、ボクに言った。

「だってお兄さん、私のこと、気になっているでしょ?」

「えっ?」

「だから、こうして私にアプローチをするきっかけをあげてるの」

"それって、どういうことだろう?"

ボクは、頭をフル回転させたが、経験値の低いボクの頭では、解は見つからなかった。

「もう一度、整理させてもらっていいかな?」

女の子は、コーヒーカップを口の高さにまで持ち上げながら、顎を少し上げて見せて、どうぞという仕草をして見せた。

ボクは、ちょっと深呼吸をすると、何処から話をしようかと考えた。

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